37: ディジェイヌ
2026-07-16 22:48:01 NmE0YTIy(15)
「せーんぱいっ、お待たせ!」
暫しいた自習室を後にし、昇降口で準備を整えていると、不意に溌剌とした声が響く。
自ら言うのもなんだとは思うが、彼女がこんな楽しげに声を掛ける相手は今一人しかないないであろう…
「おう、泉。俺も来たところだよ。」
「えっへへ。淳先輩は優しいなぁ〜」
笑い合う男女ーー淳と泉だが、暫く歩いていると不意に何やら耳馴染んだ声があれやこれやと言葉を交わす様が耳に入ってくるではないか。
「大バツです!何かの間違いですッ!」
「落ち着けって、そりゃオレらもわかってるからさ。」
「当然ですぞ、アラタ氏がそんなことをする筈も無い…」
...もっと見る「でも、あの人もなんだか本気で怒ってるみたいでデタラメとか適当には見えなかったよね……」
アイツら……様子を見ていた淳は首を傾げる泉をよそに歩み寄った。
「槌野、渋木、曽良。嶺堂までどうかしたか?」
「おぁ、串間、島田チャン。」「串間殿!」
彼の姿に振り返った友人達は詰め寄るように口々に応え出す。
「イヤ〜それがよ串間。今、和泉がヤンキー?チンピラ?なんかそんなのに絡まれててよ、しかもガチの殴り合いしてんだ。」
は、いつものことだろ?楓太の言い分に淳は首を捻るが、すぐに大一が割って入る。
「フータ氏、端折りすぎですぞ。そのチンピラが何やらよくわからないことを口走っていましてなぁ…やれ『川を汚すな』とか『自然の気持ち』だとか…」
それです!淳が思案をするより早く、間髪入れずに隆が声を荒らげるではないか。
「まるでアラタ殿が自然破壊をするかのような言い分!そんなモノあるはずがありません!言い掛かりも甚だしい!」
「隆さんっ!」「嶺堂くん、落ち着いて…」
瀬莉と介斗が弱々しく制する隆の覇気に気圧されながらも淳は引っ掛かりを抱く。
どうも妙だ。
チンピラらしき男が自然保護を謳う、アラタを襲う理由はともあれもしや……
「ねぇ、先輩!それってキャンプの…!」
不意に泉が声を上げると同時に、淳も先月の出来事を思い出し、顔を上げて彼女と向き合う。
「あぁ、有り得るな…!槌野、アラタ達はどっちの方にいたんだ?」
「キャンプ?それってGWの時の…?」
「え?なんかあったのかよ串間。」
介斗と楓太は突如切り出す淳にたじろぎながらも、一同揃って先ほどの光景を目指し駆け出した……
●『環境暴乱呈阿
〜投棄には鉄拳の清掃を〜』
「ゴルルァ!!覚悟ォできてンだろなぁ!?」
ライフジャケットにゴムブーツ…妙な格好をしたチンピラのような男が仮面を籠手のように構えるアラタをヨソに高く拳を掲げ、搾り上げるような声を上げる。
「もっと、もっとだぁ…オレの目が黒いうちはァ…環境マナーってヤツを、教えてやんよォ!」
そう奴が吼えると、右肩から指先にかけて纏われた装甲に更に空瓶や空缶が背の籠から射出されては補強するように融合し、一層厳つい様相となっていくとともに胴回りにまで鎧のように侵食していく。
より図太く、より大振りになった拳を握りしめ、地を蹴ってアラタへの距離を詰めると腕を引き絞る。
轟く咆哮を前に、アラタは咄嗟に仮面を纏った腕を交差させて構えると強い衝撃が打ち据え、アラタの身体を地を擦る勢いで大きく揺らがせた。
この野郎!アラタも持ち直すとバネの反射のような勢いに乗せて拳を叩き込むと奴の剛腕も鈍く軋む音が響いた。
「テメェ調子こきやがってぇ…!綺麗な山!美しい川!ソレを汚すような奴ァ、絶対ぇ赦さねぇからなァ…!」
「ちょっと待ってってばぁ〜!話聞くから一旦落ち着いてくれへんかって!?」
アァ!?アラタの言い分に凄むようにまたしても声を荒げ、男は拳を握りしめながら吐き捨てるように返す。
「ンだコラ、川辺にゴミ捨てといて話すことなんざねぇだろが!テメェらみてぇのがいるから、環境がよォオ…!」
「だから!んなことしらんし、注意されたのに逆ギレなんてのもしとらん言うたやろ!」
拳を振るい迫る姿にアラタも手足で弾くように応戦し、ヤツをいなしていく。
どうにも堂々巡りだ。
それでいて向こうが聞く耳持たずで埒が明かない。
「自然の嘆きを思い知りやがれェ!爆砕のォ、ジャンククラッシャァアア!!!」
「クソッ、やりたくなかったけどしゃぁねぇか!」
構えた拳に赤熱を帯びると地を殴りつけ、強い衝撃がアラタ共々に爆風を引き起こす。
「やったか!?」
砂塵の舞う一帯を男が睨めつけるが、衝撃に叩きつけられながらも持ち堪えたのであろうアラタが籠手のように仮面を構えた拳を強く握りしめながら駆け寄るではないか。
想定外の接近に慌てて拳を持ち上げるが、今放った一撃だろうか、腕に若干の痛みを抱え反応が遅れると、懐を奪ったアラタが腹めがけて力いっぱいにその拳を叩きつける。
籠手代わりの仮面諸共に奴を覆う鎧はヒビが生じ、
「おりゃあ!!」
更にアラタが首を反り返らせてから勢いよく頭突きを見舞うことで粉砕し、ボロボロと崩れ落ちた。
テメェ…!素手となった男が即座にアラタの襟元を掴み上げると横面を殴りつけるが同じく素手のアラタも負けじとやはり同様に返すとその頬に強い衝撃を与える。
・・・
「それが答えか、なぁ?」
しばしの沈黙の後強く歯軋りを鳴らしながら表情を引きつらせた男は顔に浮かぶ青筋を隠そうともしないで苦々しく吐き捨てながらメンチを切るように顔を寄せながら吼えるように叫ぶ。
「マナーを守らねぇヤツぁ!絶ッッッ対!!赦さねェエ!!環境マナー、叩き込んだルルァ!!」
「ちょっ、待ってくれよ!」
「先輩も落ち着いて!」
突如響く声とともに、二人を離すように引っ張る力が生じると、互いの距離が空くではないか。
「あぁ!?って、お前ら!」
驚きの声を上げる男は淳や隆、楓太が宥めるように袖を引き、
「ジョー、泉ちゃん!?みんなも…!」
そういうアラタにはやはり宥めるように介斗、瀬莉、泉が寄り添うではないか。
そうしてその中から淳と泉がすぐに二人の間に割って入るように遮るではないか。
「オメェら…?」
二人の姿に、先まで鬼気立っていた男がどういうわけだか呆気にとられるではないか。
アラタ殿!勢いが緩んだ様を見届けた隆が即座にアラタに駆け寄り言葉を続ける。
「大丈夫ですか!?」
「あ、あー、まぁいつものことやしな。ありがと……それはそうとどういうこっちゃ…?」
アラタが疑問を呈するより先に楓太が口を開いた。
「なー串間、オレらもさっぱりわかんねぇよ。どゆこった?」
あ、あぁ……男と共に複雑そうな表情を浮かべる淳が口を開いた……
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