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「デェーッハッハッハァ、プロ選手になって良い生活をしてみたいんだろぅ小市民共ぉ!」
「カネなら幾らでもくれてやるゥ。さぁ、私達のチームに入るんだぁ〜!」
市街地の一角、通行人達が訝しむ中で2人の影が声高に捲し立てる。
アラブ系の男達、クミンとコリアンドだ。
アタッシュケースに詰められた札束を見せびらかすように口々に言うが、
「テメーらまた来よったんかコラァ!」
それを遮るように威勢の良い声が響き、振り返った2人はサングラスの奥に驚愕を浮かべた。
「ンッゲェエ!?和泉アラタぁ〜!?」
...もっと見る「キッ、貴様ッ!引き籠もってたんじゃないのかぁ!?」
アラタが意気消沈した今ならチャンスーーそんな協力者ワイズの言葉に従い動いた筈だが、当の本人は以前見た時と何ら変わらぬ圧をまとって佇むではないか。
「ハッ、金持ちサマの道楽ってのはそんな庶民の感傷すら気に掛けちゃくれへんらしくてなぁ!せやけどぉ……!」
こんだけは覚えとけと力強く指を2人に突きつけ、アラタは続けた。
「お前らがナニ企むならどこで暴れようがボクはどんなメンタリティでも追い着いたるわ!」
どうにか辿り着いた先の光景ーー何やらしでかしていたのであろう2人の不審者目掛けて言い放つ彼の姿に3人は思わず息を呑む……
あらたん……、そんな姿に小さく笑いながら雛菜は息を吸う。
「あらたんっ!!」
「ん?雛菜ちゃんっ!!」
こちらに手を振る姿にアラタは少し驚きを見せるがすぐに微笑と手を振り返し、腕をブレザーで覆いながらクミン達から距離を取るなり近くの街灯を蹴るように駆け上がる。
「おいおいクミン。アイツお馬鹿さんだねぇ〜。私らに1人で掛かってくるつもりだよぉ?」
「しかもこの期に及んで黄色い声援ピャーピャー浴びて気合い入れてこうとは嘗めやがってぇ!だがヤツは所詮小市民!!俺達と違って地位もカネも「デリャァアッッ!!!」
なっ!?口々に得意気に吐き捨てるが、そのさなかに2人の足元目掛けて着弾を思わせる勢いで飛び込んできたアラタがブレザーに覆われた拳を叩きつけると、小規模ながらドーム状の爆風が巻き起こり、
「結ぇ〜っ局こぉ〜なるのぉ〜!?」
「クソォッ、俺達は諦めんからなぁ〜!?」
爆発の勢いで投げ出された2つの無様な声が遥か彼方へと風に掻き消されるように遠のいていった……
ふぅ……一息つきながら、腕からブレザーを解いて肩に掛けた彼は肩の力を抜くと共に先程河原で見かけたのと同じどこか憂鬱な面持ちに戻るとフラついた足取りでもと来た道を引き返していく。
「あらたん……」
「ありがとなっ。」
歩み寄ろうとする雛菜に、その肩を軽く叩いてからアラタは歩き去っていった……
「ほら、新垣さん。」
「行かなくて良いの?」
由紀恵とりさが急かすように問う。
しかし……
「うーん、わかんないや……」
思わず胸元で手を握りしめながら雛菜は答えた。
あんなあらたん、初めて見たから……
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「どうすれば良いんだろ……」
「まぁーたため息ついてら。」
昼休み、保健室で昼食を共にしていたしろかが雛菜の姿に苦笑する。
「なんかわかんなくなってきちゃったんだよねぇ。私があらたんの為にできることってなんなんだろっ……」
「オイオイ冗談はよせよ。あんなの甲斐甲斐しく付き添ってられるだけキミは立派だー。」
讃えるように自分へ向けて扇子を扇ぐ姿に小さな笑みがこぼれるがしかし、雛菜の表情は曇ったままだ。
「やっぱり、それで良いのかなって思っちゃってさ……ほら、私鞠香ちゃんみたいな適確な手当ができる訳でもないし、陽歌ちゃんみたいに人を……ていうかあらたんかな、心から楽しませるようなスキルも無いし……あいつがお洒落好きならまた違ったのかもしれないけどねぇ。」
まったく、またため息だ。
しろかはやれやれと首を振る。
まぁ人を支える者にも明確に力に成れているという拠所が必要ということなのだろうか。
況してや村雨笹露の件は結局ああなるしかなかったのだ。
領也同様にアラタの支援者という立場上、件を把握しているしろかにとって彼や眼の前の少女の振る舞いには思わず辟易としてしまう。
「気にしすぎなんだよなぁ。あんな堕落したアホの食生活改善させたんだから大したもんだってばー。それでも不満ならどっか出掛けたりキスしたりホテl「しろかちゃんっ!!」
タチの悪い冗談につい声を荒げてしまい、当のしろかはケラケラと笑い転げるがしかし、
「うーん……悩んだって仕方ないかぁ〜」
しろかの言葉に返しながら、雛菜はふと掌を見つめ出した。
なんだ?見てみれば微かに震えているが、やがて固唾を呑み、吹っ切るように握り締めると雛菜は力強く顔を上げる。
「ねぇ、しろかちゃん!私に"闘い"を教えて欲しいの、お願いっ!」
ん?えーっと……??
「あ、あぁ〜、護身術ってヤツな?まぁ確かに超越不審者共をブチのめしてる『仮面の男』のオンナって箔が付きゃ狙われやすくも「違うのっ!」
どうにか取り繕おうと宥め半分に自己解釈するが雛菜は強気に遮るではないか。
「そ、そうじゃなくて、ほらっ、あらたんと並べるくらいの、さぁ……」
勢いで切り出した割に尻込みした口調、一応自分が何を言っているのかは理解しているようだ。
しかし良くないなぁー……ヘラついた口元は鳴りを潜め、普段より切れ味を含んだ眼差しで雛菜を睨む彼女は無言で立ち上がる。
?突然の所作に雛菜が首を傾げる……が、
ッ!!
突如けたたましい音と衝撃が響き、反射的に雛菜は身を竦ませた。
「し、しろか、ちゃん……!?」
恐る恐る目を向ければ音の正体は勢いよく倒れた椅子、そしてその元凶は冷徹な面持ちで足を振り上げたままのしろかーー彼女が蹴倒したのだ。
・・・やがて何事も無かったように椅子に座り直した彼女はあっけらかんとして口を開く。
「びびった?」
へ…!?いつも通りのやる気のなさそうな笑顔で問う姿に思わず慌てて頷くと、しろかは続けた。
「ちったぁ解ってやれよー。今のでそんな情けねぇツラしてちゃ戦力としてアイツを支えるなんざ無理に決まってるつ~の。そもそも、ホントに強くなりたいヤツは私に相談せんだろ、それこそハンター試験受けるとかさぁ。」
「・・・」
「それに、なんでアラタが最後に襲い掛かった村雨笹露をぶん殴ったか解るか?」
へ!?唐突な質問に一瞬たじろぐ。
「それは、だって自分の方に来たからじゃ……?」
違う違う、思わず荒いため息交じりに首を振ってしろかは応える。
「あの状態ならアラタは避けられた、そもそも嶺堂君に負けた時点でアイツは限界だったんだよ。」
「え……?」
「でも、だからこそ、だよ。アラタも村雨も、嶺堂君がトドメを刺したなんて彼や瀬莉さんに思って欲しくなかった。そんなことも読み取れなきゃアイツと一緒にゃ戦っていけんのさ。」
「ご、ゴメン……」
覚悟が足りねぇと言わんばかりながらもどこか寂しげに笑う姿に雛菜も気まずく短慮を詫びる。
「第一闘いってのはなぁ、今の椅子が直撃したって足らんくらいに痛てぇもんだ。そんなとこにキミが行くのはアイツが一番望んじゃいないって、雛菜さん自身が一番解ってんじゃないの〜?」
「っ!!」
それはそうだ、アラタの性格ならきっと……彼の姿を自分は軽く考えすぎていたようだ。
一層気分が沈みかけると、不意に頭を優しい感触が覆う。
「ごめんなー、私には誰かさんみたいに優しく諭すってのはできそうもない。でも、そんであんたが大変な目に遭ってみろ、ソレこそアイツ泣くぜ?」
「うん……そうだね。」
ムキになったことへの自省なのだろうか、頭を撫でるしろかに雛菜も尤もだと頷く……と、不意にドアを開ける音が響いた。
「しろかちゃん、今スゴい音聞こえたけど何!?」
「あっ、鞠香ちゃん。あのね……!」
「いっやーごめんごめん。ちょっと箸拾おうとしたら椅子倒れちゃ「し ろ か ちゃ ん ?」
雛菜を遮り頭を掻いて笑うしろかだが、次の瞬間には蒼白としながら滝のような汗を全身に滲ませていた。
「ピェ……ゴメンナチャイ……」
「ま、待って!私が失言しちゃったから…!」