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「おーしろか。雛菜ちゃんどこおるか知らん?」
放課後、アラタは教室を出てから見かけたしろかに聞く。
「知らん。大体ずっと雛菜さんばっか見てるお前が知らんのにわかるわけなかろー」
「それもそっかすまんすまん。」
「・・・」
たまたま通りがかりで傍観していた六花の微妙な表情を気に掛けるでも無くそれぞれが再び去っていく。
「村雨笹露の一件はなるようになっただけに過ぎない。いつまでも思い悩んだって仕方ないさ。」
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ここ暫く学校が終わるとゴロ寝をしていたアパートの部屋の主こと領也はそう言った。
解ってはいるが、やはり納得して気を取り直そうとするとどうも気分が重い。
第一笹露の迎えた結果は探し求めていた姉との再会を果たすことができたし今では隆と瀬莉も元気を取り戻した。
文句無しのベストエンドなのだがどうも釈然としない自分がいる。
とは言え……
アラタがいつまでもその調子では新垣雛菜が一番可哀想だ。
領也としろかが口を揃えて答えたのはそんなところだ。
それもそうかとアラタは苦笑する。
自分が勝手に悩んでりゃ良いならともかく、それで他ならぬ彼女に飛び火するのは流石に悪い。
とりあえずとアラタは息を吸いながら2Aへと向かい、意を決して勢いよくドアを開けた。
「なーなー雛菜ちゃ「きゃあ!?」えっ、痛って!?」
突然襲った悲鳴と顔に直撃した衝撃に困惑しながら目を向けると一冊の本ーー楽曲におけるすべてのパートを網羅した楽譜、いわゆるスコアだ。
が、そんなことを認識する暇は無かった。
「テメーどーゆーつもりだがや!?」
「あらたん今体育の着替え中!」
「ちょ、馬鹿ぁ!スケベ、変態っ!!」
どわぁ!?突然降りかかる猛攻に狼狽えながらもアラタは身を引きずって後退りする。
「悪りぃ、しっつれ「和泉貴様ァッ!!」エェッ!?」
「不意討ちとは卑怯なるぞ!」
「お前アホかぁーッ!」
「和泉さん見損ないましたっ!」
「こんな小説みたいなクズ男だとは思わなかったわね……」
「まってゴメンて落ち着いて!?すぐ消えるからっ、てぇ!?」
「Oh,no!You are Demon-Beast!!」
「おりゃぁカウントボム、スイッチオーン!!」
「対晶殻用の特殊酸を装填…!」
「開発中のアシッドランチャー、その身体で試すんだーっ!」
「皆このセンセーショナルは逃しちゃだめだよ〜!!」
「待てって待てって待てって、ハナシわかるヤツはおらへんのかっ!?」
ヒギャァアアアア!!!!!
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「えー、とりあえず摘出は終わったな。」
呆れたようにしろかが言い、領也は並べた物を確認がてらに眺める。
バンドスコア、ドラムスティック、理髪鋏、矢、弾丸、クナイ、剪定鋏、時限爆弾の破片、強酸の付着したカプセル状砲弾の破片……
よく自力で逃走できるくらいには耐えきれたものだ。
やれやれと首を振る領也の脇で最後の仕上げにとしろかが紙ーーデカデカと『最低男、白昼の凶行!?』と書かれた記事の下書きと、それを彼の額に射止めた万年筆を取ると、何度もハネつけられたのであろうスケボーの車輪痕と墨汁に塗れたアラタの情けない白目顔が露わになった。
「クッッソ、りょーやさんに背中押されたのに結局コレやで……」
仕方ないよ、ぼやくアラタに領也が即座に返した。
「これは事故だからね、ワタシにはそんな日もあるとしか言えないさ。…サンは、要らない……」
「納得せーへんなオイ!」
這々の体で潜り込むように領也の部屋に飛び込んできたザマを思い出しフキ出す口元を必死に抑えるしろかをムッと睨みながら身を起こしたアラタは今度は彼女に喰って掛かりギャーギャーと言い合いを起こす。
まぁまぁ、この期に及んで取っ組み合う2人に割って入った領也はアラタを引き離して座り直させる。
「落ち着きたまえ。今ここで言い争ってどうにかなる話でもないだろ。ところで和泉クン。」
とにかく話を変えようと視線を泳がせ、ふと目についたカレンダーから何かを思い起こした領也が再びアラタに切り出す。
「もうすぐ麻帆良祭だね。」
「あー……そういやそっかー」
おぅ?彼の言葉につられてカレンダーを見たアラタは抜けた声で応える。
「折角だ。新垣クンでも連れて行ったらどうだね?」
えっ?予期せぬ言葉にアラタは思わず口籠る。
「な、なんでまたそんな……」
「ホラ、キミは新垣クンに昔のことを殆ど話したがらないじゃないか。少しくらい思い出の一端を曝け出しても良いんじゃないかな。」
そりゃそーかもしれんけどさ〜、蚊を見つけて追い始めたアラタに呆れ交じりで悪戯っぽく笑いながら領也は続ける。
「ウェディングドレスの撮影とかやるんだろぅ?そんなコトできるのはベストパートナーの証だ。聖櫻に来た経緯が経緯とは言えキミは多くを語らなさすぎるぞ。もっとお互いを知っておくべきだ。」
「そーそーソレよソレソレ。シドーも珍しくたまにゃあ良いこと言うじゃねーのー」
うるさいよ、イシシと笑いながら茶々入れするしろかを領也があしらうが彼女は構わず口を挟む。
「まぁ、昔を気にせず今を共にしてるアンタを〜なんて言やぁ聞こえは良いけどさ、なんでもだんまりじゃ良くないよ。」
「さっ、撮影は……撮影、やろ……?」
おや、歯切れ悪い返答に2人少し眉が動くのを気に留めずアラタは言う。
「やからって母校なんて見せられても困るやろうし、第一のこのこ麻帆良なんか帰って"連中"に目ぇ付けられたらあぶねーやろ。」
連中……ああと2人で顔を見合わせながらやれやれと笑う。
彼なりにも色々と気に掛けているようだな。
しかしまぁ……
「それなら大丈夫だ。『彼ら』のことはワタシ達も常々警戒しているからね、迂闊にヘタな手は出せないハズさ。」
「それに、今なら襲われたって護れるくらいの力は付けてんだろ?」
うーん……後押しするようなキリッと凛々しい笑顔で口々に言われる様にアラタも思わず閉口してしまった……
「たまにはいーじゃん、聖櫻を離れた遠方デートもよ」
「デッ!?!?!?」
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「な、なぁー雛菜ちゃん?」
昼休み、向かいの雛菜にアラタは切り出す。
「んっ、どうしたの?」
・・・あかんあかん、思わず躊躇いかけた。
まぁどうせ答は見えている、億劫になる必要は無いとアラタもハラを決めて一息つく。
「あの、さ……実はこの日にボクが中学行ってた麻帆良の文化祭あるんやけど、さ……流石に興味ねぇよなぁ〜?」
まぁそらそうよなぁ……しげしげとチラシを眺める雛菜をヨソに1人自己完結的に頷いていると、不意に彼女は顔を上げ、
「えっ、良いじゃん。行こうよ!」
ン゛……?たった今予想した数秒先の未来を覆すように少し身を乗り出した彼女はそう言い、あまつさえアラタの手を両手で握り込んで引き寄せて来るではないか。
「行きたい。私、キミのこともっと知りたいっ!」
「えっ、あ、え?・・・エェ〜〜ッ!?」
マ、マジカ……詰んだと言わんばかりのイヤな汗を滲ませながらアラタは放心気味に引きつった。
あ、ところでここは2A教室な訳ですけど……
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・・・
「えーっと、なにこれ?」
「知らん。」
「さぁ……なんかずっとあんな状態……」
トレーニングルーム前のラウンジ、通りがかった新也は困惑気味に同じく居合わせた理駆とるいに聞くもやはり要領を得ない。
しかしそんな3人を気に掛けるでもなく目の前の異様な光景は進んでいく。
「ハイ、これとかどう?」
「あぁ〜、懐かしな感じの……ブヮッカモンっ!目立つわこんなん。」
美知留から頭頂に一本だけ毛が靡く禿頭のカツラを渡されたアラタが声を上げて突き返す。
「おうおうアラタ、これ良いんじゃねえか?」
「怖いわ!てか着ぐるみ前提のヤツやないかコレ!」
斗真から渡されたのはかぶれば絶対バランス悪くなりそうなティラノヘッド、即座にアラタも応える。
かれこれ先程からこの様子らしい。
「ダメなんよ、もっと目立たん方向で固めてかないとさぁ!!」
「なんだぁ!?いつに無く必死だな!」
「じゃあコレ、新しい顔よっ!」
※
「うん……!これぞ古き良き潜入スタイルやなっ。」
パーマヘアを頭に無造作に乗せ、円いサングラスを掛けたアラタが姿見鏡の前でニッと笑い、カラフルな布を無造作に縫い合わせたようなジャケットを颯爽と羽織る。
それで良いんかい。
もうなんだって良くない……?
えぇ……様子を見ていた一同、困惑気味に閉口する。
「いやーありがとな。これぐらいがエエんよ。」
じゃな、そう手を振りながら去るも、
「ちょいとごめんよーっ、と?」
向かいから来たしろかとぶつかりかけ立ち止まる。
「おぅしろか、わり。」
アラタはそう通り過ぎようとするが、彼女は数秒してから盛大にフき出す。
「なんっだお前クズみてぇなデートコーデだな。正気か?」
ピタリ、しろかの言葉にアラタはふと立ち止まった。
・・・
ハァー?数秒の沈黙の後、アラタは呆れたような声を上げながら振り向き、しろかの頭をグリグリと雑に撫で回す。
「ただダチ同士でちょいと出掛けるだけやろが、アホの一つ覚えみてぇにデートデートってキミさぁ〜アタマのお弱いアホガキや思われるでホンマ。」
「オッオッどした?wどしたどした??wえ、大丈夫かダイジョブか?ww」
対するしろかは煽りMAXな趣きで爆笑しながら返す。
「ハッ、うるっせーガキ。ガーキ!」
「やーいやーいざぁこざぁこ〜〜www生き恥晒すくらいならクビ括れ〜」
中指を突き付けながら笑い飛ばすアラタをどこ吹く風としろかが嘲笑交じりに言い返しながら見送る。
「たくっ、あんだけ大声出せんなら心配する義理も無かったな。私もさっさとアレに着手しねぇと……」
・・・
えぇ……アラタが去り困惑気味の微妙な空気が流れるのを気にもせず、呆れながらもどこか清々しくしろかは笑みを浮かべた……
『靄と晴れ間』E N D
「ったくイッチョ前に女に入れ込みやがって。アラタも成長しとるわ。これでこそまさに
せーおー
『性 旺 学 園』ってか、ハハッ!!」
「し 〜 ろ 〜 か 〜 ちゃ 〜 ん 〜 ?」
「ヒィン」