28: ディジェイヌ
2026-07-16 21:43:58 NmE0YTIy(15)
「ありがとうございます、志藤さん!」
「この御恩は必ず……!」
「良いよ、頑張りたまえ。」
・・・
会釈をしながら自動車を降りる少女2人、軽く手を振って見送った彼は再びアクセルを踏み出した。
[あっれ、行かんのかい?]
「ワタシが行ったところでどうなることでもないしね。なにより少年少女が自ら向き合おうとしているんだ、水差しなんてできないさ。」
...もっと見るスピーカーから問いかける気怠げな声に小さく笑いながら領也は応えた……
『流離いの士.八~時雨~』
「こぅら笹露っ!」
「痛てぇっ!ひどいな〜姉さん。」
田園が広がる田舎の片隅……
髷頭をさすりながらやや太い木の枝を握る少年は視線を送る。
隣に奮然と佇むのは杓文字片手に頭を手拭いで巻く女性だ。
「全くいくつにもなって木の棒なんか振り回して。危ないからやめろと言ってるだろぅ!」
フッフッフッ……彼女は続けるが、お構い無しに不敵に笑う少年ーー笹露に一層眉を上げた。
「棒だなんて……今でこそこんなだけどね。コレは伝説の名刀、さ……あいて!!」
涼しげな顔で得意げに言い放つが、間髪を置かずに再び杓文字が音を鳴らす。
「ほんっと呆れた!とっくに元服してて、いつまでそんなこと言ってんだよっ!」
「だからって何度も叩かないでおくれよ。」
「ハイハイ水飲んだならさっさと畑にお戻り。あと父様も休んでほしいから連れてきてちょうだい!」
不満気に口を尖らせる少年を受け流しながらテキパキと要望を伝えると、彼もやがて柔らかな笑顔で了解を示して歩き去って行った……
・・・村雨笹露は小さな村の農家に産まれた長男だ。
彼は武士に憧れながらも、優しい両親と姉を始めとする人々に囲まれた村で過ごす幸せを愛する心優しい少年だった。
「父上ッ母上ッ姉さんッ!!皆、どこにいるの!?」
地形が崩れ倒壊した家並みの中、そんな彼は届かぬ声を轟かせた……
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