|
|
ーーそして、流石は学園長先生だね、アラタ君のことも斟酌してくれて何かと手を回してくれたよ。
その一環で実力を計るための試練課したり色々とやるなかで、彼は偶然休日に暴れ出した超越不審者相手に組織のヒトが駆け付けるまで持ちこたえる健闘を見せたんだ。
元々PAって警官か、あとはハンターとかその組織とかが片手間程度に相手してるくらいだったんだけど、数が増えて手が回らなくなってるって懸念が出てたんだよ。
その矢先シドーはそんなアイツの健闘ぶりを見てコレは化けると踏んだんだって。
「・・・」
で、進路が決まってなかったのもあって聖櫻が超越不審者の出没率が高かったことや校風的に彼に合うんじゃないかと、シドーから学園長に、学園長から武上理事長にと掛け合った結果、討伐できるくらいの実力を付けたうえで超越不審者を優先的に鎮圧するという任務を負って聖櫻学園に入学したって訳さ。
...もっと見る「ま、チカラ付けるために一年分は入学できずシドーから高1分の勉強教わりつつ辺境で修行してたけどね。とりあえず長くなったけどコレでアラタ君が聖櫻に来た話は終わり。で、こっからはこないだの海とか貴女の今後とかと関わる話ね。」
ーー元々、麻帆良生の組織関係者の中には修行として中高卒業したらヨソに行って治安維持活動をする者もいるけど....
当然、そんな特別案件をポッと出の、況してや部外者が引き受けることになったんだからそりゃ荒れたよ。
んで、納得いかない選民意識高い系の奴らが
『 和泉アラタによる麻帆良学園の実情に踏み込んだ動向反対派』
ーーまぁ平たく私らは『過激派』って言ってるけどねーーを立ち上げてあの手この手でアラタ君のボロを出すなりチカラで敗るなりして当時の現場を見たこととPA討伐の件を白紙にしようとしてるわけよ。
その過程で媚薬を混ぜたのは過激派の一人ベノムスーー実力で敵わないから雛菜さん巻き込むのもお構い無しにアラタ君の不祥事でっち上げようとした卑怯者だよ。
そっか...やがて雛菜はボソリと呟いた。
「あらたんが無理して、意識回復するなりすぐ事件に行くって言った時、無茶するのが怖くて考えが解らなかった....そうだったんだ。」
うん、頷くなりしろかは続けた。
「で、こっからは私が雛菜さんに聞きたいことだよ。私5月頃に、アイツとつるんでると何が飛び火するか解らない、貴女をも不幸にし得るって言ったよね?」
先より増して神妙な語調に、雛菜も少し身構えながら頷く。
「媚薬を飲まされたってのはつまり、アラタ君の都合に雛菜さんが巻き込まれたってことだよ。」
「・・・」
「もしあの時、組織生徒の良識派が止めなかったら、文字通り貴女が彼と関わったばかりに不幸になるって構図が成立してたんだよ。」
な、そんなのっ!思わず声を荒らげる雛菜を制止ながらしろかは淡々と続けた。
「だから今一度聞いとくね?そういうことがあって、これからも危険が起こり得るうえで、彼と積極的に関わっていたい?覚悟はある?無理なら無理と言っても誰も怒らないけど....」
「・・・」
私は...顔を上げ、心配している風でもない面持ちのしろかに目を向け、雛菜は既に出来上がっている答えを返すことにした。
「心配してくれてありがとう。でも、あらたんにどんな事情があろうと私の気持ちはもう決まっているよ。だって...」
だって....
ーーーーーーーーーーーーーー
新垣婦人に全て話す....
イヤ、厳密には深いところは言えないため、愉快犯から嫌がらせを受けたというテイに改編はしたが、変な薬のせいで起きた海水浴での出来事を話した。
あらあらと驚いているらしい彼女の顔を窺う勇気もなく、もう一度アラタは頭を下げた。
「ホンッッマすみません奥さん!雛菜ちゃんのことはお任せをとか言いながらこのザマですっ!」
うっふふふ...元よりどんな対応も甘んじて受ける所存だった少年は、目の前の友人の母がーーたった今娘に不貞を働きかけた話をした相手が笑う声に呆気にとられた。
「え...?」
「あはは。もぅ、今更そんなこと気にしなくたって良いわよ。それとも...イヤだった?」
「アッイヤ、その...イヤとかって問題じゃなくてデスネ....」
悪戯っぽく不敵に笑む姿も今は畏怖の対象だ、一瞬にして竦み上がるアラタだが婦人は一笑に付して続ける。
「ふふ、冗談よ。でもあの子いつも心配してたのよ?アラタちゃんは無茶するけど全然疲れてるとか言ってくれないって。それに...」
っ!彼女から聞かされる雛菜の話に思わずハッと反応するが、引き続き婦人は言葉を繋いだ。
「たまにはそうやって色々と確かめ合う時も必要じゃない?雛菜ちゃんもその時色々とアラタちゃんに言ってたんでしょ?」
「え、ええ、まぁ。雛菜ちゃんがボクのこといつも心配してくれてるんやなってのはわかりました.....」
バツ悪く答える少年に満足げに笑むと婦人は更に言う。
「そ、れ、に。アラタちゃんだったら全然オッケーって言うか、なんなら薬とか関係なくそっから先まで」
「オオオ奥さんン゛ン゛ ! 」
「フフッフッ...冗談よ。まぁ、これからもあの子のこと、よろしくね。」
「心臓に悪すぎます。でも、ハイ。お任せください。あと、ありがとうございます....」
頭を掻きながらも気持ちが晴れてきたのか、アラタは笑って応える....と、
「あーはい、璃子さんお久しぶりです。....藤城地区のツヨシとレツ?なんすかソレ、とりあえず承知しました。行ってみますっ!」
通話を終えるなり立ち上がるとアラタは婦人に頭を下げる。
「すみません奥さん。ちょいと用事入ったんでこれで失礼します!」
はいはーい、緩く手を振って駆けていく少年を見送り、
「ふふっ、若いって...良いわねぇ。」
満足げに微笑むと彼女も立ち上がった....
ーーーーーーーーーーーーーー
・・・は?
「好き...だから。」
晴れやかな笑顔で返す雛菜の言葉にしろかは唖然とした。
この期に及んで何を言っているのだとさえ思えてくる言い草だが、雛菜は更に続けるようだ。
「今の学校生活が、皆と笑い合える毎日が、あらたんと色々何気ない話をしてる時が、あらたんが好きだから...」
そ、そうかい...頬を掻きながらしろかは気だるそうに言う。
「うん。毎日が凄く充実してて、その中でもあらたんのことが強く浮かんできて...」
それに...真面目に表情を引き締めると迷い無くしろかを見据えるまっすぐな視線に思わず彼女も背筋を直す。
「そんな話聞いたらますます放っとけないよ。あらたん無茶はするのに、あんまり休養とかに気を遣ったりしないし心配かけられてばっかりだもん。」
「・・・」
だからね、呆れとも驚きともーーあるいは安堵ともつかない曖昧な表情を向けるしろかを気にせず雛菜は言った。
ーーあらたんがみんなの安全を守ってくれるなら、それで私が心配になるなら...私は自分にできることであらたんの安全を少しでも守って、心配事を減らせるようにしたい。
それで力になれるなら、それが幸せだよ。
「・・・そうかい。んまぁ、二回聞いてみてそれならもう大丈夫そうだねー。自分の結論(ミチ)を歩むのが大事だよ。」
曇りない言葉....しばし黙していたしろかが漸く言葉を返すと彼女は困ったように眉を下げて手を合わせる。
「えへへ、ゴメンね?わざわざ色々教えてくれたのに...あと、ありがとっ。」
ハイー?突然の謝意に要領を得ず首をかしげる。
「しろかちゃんってちょっと素気無くて、あらたんには旧知の仲だからだろうけど毒っぽいなぁって思ってたけど、私とかあらたんとか...他の皆のこととかも心配してくれてて優しいよねぇ。」
「ははっ、私が優しかったらそれは偽者(ドッペルゲンガー)ですねー、気を付けましょう。」
照れるでも否定するでもなく、彼女はおどけて返す。
ふふっ、そんな様に微笑んで答える雛菜にやれやれと立ち上がり、供に寮を出た。
|
|
「ったく、報告は以上だよー。」
[そうか、本人が選んだなら良いんじゃないかな。]
そうだねー、領也の言葉にしろかはため息をひとつ、
「雛菜さんはソレで良いし、あのコは良い子だから私も支えてあげたいけどさー、アラタ君はそういう意味では真面目だから、万一最悪の事態になったら...」
[その時はその時でどうにかするのがサポート枠、だろぅ?]
「"見なかったことにして生きるなんてイマの自分はイヤ"ねぇ...」
ヘイヘイ、涼しげに返す領也に不貞腐れたように返すと、保健室の戸を開く音が聞こえる。
来てたんだ、快活な声に軽く手を挙げ返すと鞠香は挨拶もそこそこに不思議そうに切り出す。
「そういえばさっき雛菜ちゃんと会ったら嬉しそうだったけどなんか知ってる?」
聞くところによれば、昼食の時にもどこか上の空で追求しても慌てて濁され、同席していた陽歌からも海の日からずっとそんな感じだったと聞いていたという。
心配だっただけに打って変わったような彼女に驚いたと言う鞠香に緩く笑いながら首を小さく振るとしろかは返す。
「知らんがな。」
え...?訳知り顔に見えた彼女の思わぬ言葉に面喰らうが、そんな鞠香をよそにわざとらしく肩を竦めた。
「ヒト様が真面目な話したら返ってきたのがオノロケよ、そんなんもう末永くご勝手にどーぞ、て話でしょ?私はそう言いたいけどねー。」
「・・・フッ、ふふふ....」
っな、なんだよー....露骨な悪態にやがていきなり笑う鞠香に逆にたじろぐと、彼女は言う。
「いやぁ、なんかしろかちゃんも嬉しそうだなぁってさっ。」
「アータはここんとこ疲れてらっしゃるからねー、眼の御自愛をお勧めするわ...」
それはそうと、鞠香を茶化しながらもふと、笑う彼女にしろかは少し神妙な顔をする。
最近日常的にはいつも通りだが、どこか張り詰めたような真面目な表情を時たま見せることを自分は知っていた。
だからこそ、その笑顔と自分の返答から不意に思い出したようにしろかは返す。
「鞠香さんもホントに無茶すんなよー?最近色々あるしー。」
「うん...そうだね。ありがとう。」
ーーーーーーーーーーーーーー
「さて、明日から夏休みですが...羽目を外しすぎず、宿題のやりこぼしもなく。何よりも大きな怪我もなく皆さん元気でまたお会いしましょう。」
一同、陽子の言葉に元気よく返事をして解散する。
・・・
あらたんっ!やがて元気よく呼び掛ける声に振り返った。
あの後お互い思うところも晴れて所謂いつも通り、今日も今日とて帰路に着く。
「キミは夏休みになんか予定あるの?」
さぁーなぁ、困ったように頭を掻いてアラタは答える。
「正直、もう暫くはゴチャゴチャめんどいのが結構ありそうやし何とも言えんわなぁ。あとどっかのタイミングでイエに顔出すくらいはするかもしれへん。」
そっか....やっぱりな感じの言葉だが気落ちするでもなく雛菜は口を開いた。
「じゃあさ、いつかはともかくとしてなんか予定は立てておかない?あと、疲れてて必要なこととかあったりしたら、その...遠慮せずに私を頼ってほしい、な....?」
・・・提案とともに問い掛けが少し弱気な声になりながら投げ掛けられ、やがてアラタは少し真剣な彼女の面持ちに小さく笑いながら肩を叩く。
「ああ、せやな。そん時はよろしく頼むわ。」
「ふふっ、うん。」
まだ終わらぬ問題も多々あるが、暫しは二人の雑談に身を委ねよう。
そんなことを思いながらアラタは雛菜と笑い合い、明日からのいつか供に過ごす日の予定を話し合った.....
EP32ーーE N Dーー