ーーキャーーー!!
照りつける太陽、人が賑わう砂浜、広大に広がる蒼....
白くしなやかな肢体を踊り出しながら彼女は駆け回ってその光景を見渡した。
まじまじと一頻り眺めるなり、少女は満面の笑顔で紫晶(アメジスト)を思わせる瞳をより一層輝かせながら声を上げた。
「うーーーーーーっ....みーーーーーーー!!!」
...もっと見るEP31「夏だ海だっ!アブナイA♥ENTURE」
大体一週間前くらいのことだ。
「今日も暑いねぇ。」
「それなー、でもこっからもっと暑くなるんやぞ? 」
やれやれと、今日も授業を終え雛菜とアラタはぼやきながら昇降口を出る。
「あ、アラタさん、新垣さん!」
暫く歩くうちに呼び掛けられる声に振り向くと手を振る姿...
陽が照り返る程に白い肌と長い銀髪、一層輝く笑顔...
「ユーリヤちゃんっ!」
「おつかれー。夏だしずっと暑いけど大丈夫?」
ハイ!少し気だるげな二人に対し、元気に返す彼女は言葉を続けた。
「私、日本の夏ってどんな感じなんだろうって、楽しみにしていましたから。」
「はぇー、そっか(抱き締めたい、この美白ッ!!)」
「やっぱりロシアにいるとこういう温度は新鮮なの?(守りたい、この美髪...!)」
各位邪念を抱きながらアラタが彼女の日陰となる位置に並び、雛菜が折り畳みの日傘を取り出すと彼女の隣を歩きながらかざす。
ありがとうございます、くすりと会釈するユーリヤは雛菜の問いに答えた。
「それもそうですけど...旅行ではここよりも暑いところも行きましたからそれに比べれば
というのはありますし、何より....」
何より?首をかしげると彼女は目を輝かせて写真を見せる。
「海です!私、日本の海に憧れていました。だから夏が待ち遠しくて...!」
「・・・」
ふふっ、嬉しそうに微笑みながら歩くユーリヤの横顔に見入ったアラタは決意した....
※
「なぁりょーやさん。」
なんだね、珍しくアパートの自室に胡座をかく少年に領也は不思議がる。
「海行きたい。」
「・・・ワタシは良いよ。構わず新垣クン辺りとでも行きたまえ。サンはいらない。」
いやそれがな...案の定素気ない彼にアラタは頭を掻いて事情を話す。
「...キミがやたら溺愛してるっていう留学生か。電車なりアイテム2号なり使えばワタシの運転より速いだろ?」
「ンッカァー解ってねぇ!ゴタゴタした街並みから段々外れて郊外に出て、自然が増えたなとか思ってる頃合いに差し掛かる見渡さんばかりの浜辺!!そこからが海水浴やろ!!ついでにアイテム2号は流石に三人乗って運転はできん!」
「(うっわ、そういや和泉クンもプロフィール上は旅好きとか言ってたか......)わかったわかった、アイテム2号使えるなら運転くらい大丈夫だろ、ハイ。」
突如ヒートアップするアラタにやれやれと首を振りながら領也が鍵を差し出した。
「そっか。まぁ車ありゃりょーやさんいらへんしぃ...てアホか!要るわ!アイテム2号は免許要らんくても車は免許要るやろ捕まるぞ!」
彼のノリツッコミに爆笑する領也だがアラタは構わず話を続ける。
「なんならこないだ楠葉おねいちゃんからアイテム2号にナンバープレート着けろとか言われたからな。」
「ハハハ、それでどうしたんだい?あとサンはいらない。」
「んなダセェ、着けるかいな。ホリッさんと鬼ヶ島警部のご理解と説得で納得してもらえたわ。」
さて本題に戻るか、一頻り喋ったアラタは座り直し頭を下げる。
「なぁーりょーやさんさぁ、頼むよぉ。わざわざニホンまで来てくれた可愛すぎる後輩なんやしエエ思い出できるだけ多めにしてあげたいやんかぁ。」
「車なら多分迅の方が馴れてると思うよ?」
「ア゛ー!今それどころや無いの知っとるやろが!明日から夏休み一杯くらいまでしろかの昼代と間食代くらい負担するから!!」
「・・・」
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「うーーーーーーっ....みーーーーーーー!!!」
「...ゴハァッッ!!」
「わわっ、アラタさん!?」
「あー、気にしないで。ただの発作だから....」
不意に血を吐いて倒れたアラタにユーリヤが狼狽するも雛菜は呆れながら抱き起こす。
「フッ、フフ....世界よ、これこそが"笑顔"やで....」
「全く、なーにワケわかんないこと言ってるの。ってうわぁ!?」
「アラタさん、新垣さん、スパッスィーバ!!ありがとうございます!」
急にアラタと雛菜にまとめて抱きつき満面の笑顔を見せるユーリヤに雛菜が慌てる。
「ちょ、ユーリヤさん落ち着いて!」
「そんなの勿体無い、海は泳ぐところです。早速沖まで泳ぎましょう!」
「そんなに急がなくて良いから、あとそろそろあらたんが死んじゃう!」
え...?雛菜の言葉に恐る恐るアラタを見ると、首が反り返る勢いで口から噴水のように鮮血を噴き上げており、思わず離れてしまった。
「ああ、すみませんアラタさん!強すぎましたか?」
「ふふ...こうやって果てるならボクは本望やで...私のことはおじさまとでも呼んでくれたまえ....」
違う違う、ユーリヤにぼそりと雛菜がツッコむのをよそにアラタが返す言葉を聞いてため息をもらす。
「ハイッ、おじさま♪」
「いや、ユーリヤさんもいいからぁ。」
いやーそれにしてもとシートに座りながらアラタはバッグを漁り言う。
「嬉しそうなユーリヤちゃんを見てたら貧血になりました。」
「クルァ和泉クン!"不要不急のタンサン"を何本も飲むんじゃないよ!!バカッ!」
タンサン(炭酸ではない)を三本ほど取り出し一気に流し込む彼に飛ぶ怒号で思い出したアラタはユーリヤに向き直った。
「そやそや、礼ならこのアンちゃんに言うたってくれや。功労者やで。」
「志藤さん、スパッスィーバ!」
「いやいいよいいよ、ワタシは和泉クンに頼まれただけだしね。」
不意に手を握られ領也は空いた手を軽く振るがアラタが不意に詰め寄ってくる。
「JKに手ぇ握られてニヤけんなや。」
「うるさいよ。」
「しかもっ、ボクはハグまでもろてしもうたのに、ブクク...りょーやさん握手だけ、フッフフフ.....」
「知らないよ、子供にそういう趣味はないよ。」
適当にあしらいながら読書に更ける彼にニマリとアラタは口角を歪めて耳元に一層近寄った。
「じゃー鳴海センセとか深見センセら辺ならえーんですかー?アッ、ところで弥生センセはそういう意味ではアンタ的にはまだ子供なん?」
「そうかそうか...今の発言を月白先生と祐天寺先生に今後の教育の参考として送っとくよ。」
「あ゛あ゛悪かった、悪かったよりょーやさん!」
「わかればよろしい、サンはいらない。」
涼しい顔をして再び本に眼を落とす領也にチッと不貞腐れるとやがて雛菜達の楽しげな声が耳に入った。
「さてと、まずは日焼け止め塗るよ、髪用もあるからね。」
「わぁ、髪用まで用意しているだなんて、流石です!」
「ふふっ、日焼け対策は万全だよ。」
へいへい、アシカのように這い寄りながらアラタが口を挟んだ。
「おっけー、ぜ、ぜんっ、全身、ッハァー。全身、ボクがヌッ、塗ったるから、二人とも、安心ぐわぁ!!」
「はーい、私達先に塗ってるからちょっと待っててねー」
雛菜に流すように蹴られ、砂に上半身が埋もれて痙攣するアラタを見て領也が声を上げて笑った....
「クッソー、どいつもこいつも!ボクの扱い悪すぎんか、主人公!!」
良いもん、むくれながらアラタが雛菜のバッグを勝手に漁って他の日焼け止めを探す...と
「なにしてんの!」
「次はアラタさんですよ~」
雛菜に叩かれ、側に座るユーリヤにたじろぎながらアラタは言う。
「ほっといてくれ。日焼け止めくらい自分で塗るから、なんなら塗る必要もねぇしな。」
「ダーメ、塗っとかないと身体にも悪いんだからねっ。それに髪には塗らないつもりだったでしょ?」
「おーいおい、男なんやから髪は別に...」
「ユーリヤさん押さえてて。」
ハイッ!不意に羽交締めをかけるユーリヤ、突然の出来事ーーというか主に肩甲骨周りに密着する感触ーーにアラタは驚くが、
「ありがとっ、それー!」
「あっ、ちょ、雛菜ちゃん!?ユーリヤちゃん!?あっ、ちょ、待っ、アァアーーーッ!!!」
・・・
「コ、ココハテンゴクナノカナ....?」
「うん、最近の女子は恐ろしいな。」
柔軟運動を済ませ海へと進む二人を背に倒れるアラタ...先程からその様子をヒくような目で見ていた領也が呟いた。