※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「かくれんぼ上手いねぇ。でも、ポルターガイストを前にして、やり過ごすなんて出来るかい?」
アラタ達が隠れる教室に面する廊下に例の使い魔が溢れかえり、花男はあぶり出しのためにポルターガイストを起こし、ニタニタと待ち構える......
「どりゃあッ!!」
不意に、勢いよく掛け声が響くと、突然ひとつの教室がドアを弾きとばしながら爆風が生じ、一帯にいた使い魔が一掃される。
「やぁっと会えたねぇ~。」
目の前で木刀と拳銃を構える男女の姿を見た男は嬉しそうに声をあげるが、
...もっと見る
「もう遊びは終わりよ.....」
「バーカ、鬼ごっこもかくれんぼもしまいや。」
「ええ!じゃあ降参だね♪細かいことは水に流してさあ~。ぼくたち三人仲良く、一緒にトイレで暮らそうじゃないかぁ。」
「アホ、オレらがオマエを捕まえるんだよ、鬼さんコチラーッ!!」
「一生、トイレで困ることはないんだヨォ?ぼくなら涼ぅしくしてあげられるのにぃ。」
冷ややかな物言いを聞いてもなお、上機嫌を崩さない様を前にしてアラタが言い放つと、そのまま木刀を薙ぎ払い、使い魔を切り捨てると、そのまま花男を取り囲む連中へと斬り込んでいった.....
「ほな、頼んだでほむらちゃん!」
「ええ、私の本当の戦場はここじゃない。早く終わらせましょ......」
言うが早いか、ほむらもショットガンを取り出すと構え、次々とまとわりついてくる奴等へと撃ち放つ。
「ウォオオオッ!!どおおおしてぼくを虐めるんだぁあッ!!トイレの守神とはぼくのことなのにィ!」
いよいよ冷遇に堪えきれなくなった花男が激情し、ランドセルから三本のリコーダーが姿を現すと、少女めがけて一直線に突進を繰り出す......が、
はぁっ!もう一挺の拳銃を取り出すと同時に乱射して撃ち落とす。
「でも、なんでリコーダー......?」
「小学生に『好きなコのリコーダーをくわえる奴が一人はいる』ちゅう、ある意味花子さんなぞよりよっぽど怖ええ都市伝説やな、そらよッ!!」
次々迫り来る人体模型を殴り、生首ボールを次々と蹴り飛ばしながら飄々と語るアラタはひとつ指をならすと、
「ダラッシャァアッ!!」
地に木刀を叩きつけて衝撃波を再び起こし、更にほむらが放った乱射も相俟って視界不明瞭な煙が立ち上る。
「ごぉぅほ、ごほっ!皆どこいるんだよぉ。なんやかんや逃げたり、ホントはぼくが怖いんだろぅ?強がるなよォ!一生トイレが詰まるようにしてやるぅ!」
煙を払い、見通しを良くしようと努めながらも勝ち誇る花男だが、
「うるっさいねん、気持ッち悪いわぁッ!!」
不意にどこからか響いた声に狼狽えると、突然背中に強い打撃が走り、前に倒れこんでしまう。
なにすんのさ、そう背中を擦るが、ある違和感に気付いた。そう、
「あれ!?ぼくのランドセルはぁ!?」
「へっへー、これでやかましい手下は呼び出せへんやろッ!!」
「ぁあ!よくもぉおッ!!いったい!痛ッ!!」
真二つにされひしゃげたランドセルに激昂するも、顔に投げつけられて怯んでしまう。
突如、ほむらの名を呼びながら駆けていくアラタを確認した彼女は、花男の足下目掛けて威嚇するように銃を乱射し、
「ぼくを虐めて、祟りが怖くないのかぁい?」
そうあわてふためく花男にも、
「ええ。私が怖いのは、大切なものを失うことと、今は、この関係ない世界を『魔女』に巻き込むことだけよ...」
和泉君...後ろから勢いよく駆けてくる少年の姿を確認すると、彼女は相手目掛けてバズーカを構え、アラタはスピードを落とさぬままに全速力で花男との距離を詰める。
「あ、あ、一人は暇なんだ...ぼくはただ一緒に居てほしいだけなんだよぉ...片隅でずぅっと独りぼっちは、寂しすぎるだろう...?」
消え入るように気弱な声をもらす花男に躊躇うことなく、その鳩尾へと、
「あぁ、せやからお前のこともこの力から解放したるわ...!」
「ぐっはぁあ!?」
勢いよく拳を叩き込み、白眼を剥いて項垂れたところへ突き放し、顎を突き上げる。
「ほむらちゃぁんッ!!」
花男の口から、おぞましい形相を浮かべた炭色のモヤの塊が尾を引きながら飛び出すと共に、少女へ喰らいつかんと飛び込んでいく....
「『孤独』の魔女、と言ったところかしら。それ故に彼と惹き合ったのね。」
しかし少女ほむらは動じることなく、構えたバズーカのスコープから魔女の眉間を定め、二発三発と大弾を撃ち込み、その体を貫いた......
オマケや!アラタが叫ぶと1つの袋を奴の近くに放り投げ、それを勢いよく切り裂く....
瞬間、白い粉状の霧が身体を覆うように霧散し、それに触れた孤独の魔女が滅するように溶け崩れ、おぞましい声を上げながら苦悶の表情で暴れ狂う。
「オラァ、念入りのッ!!千斬り万斬り、無量大数斬りィッ!!!!」
最後に行動力が落ちたところを見計らったアラタが際限無く魔女を切り刻み、
「霊でも出たらと思て塩を持ち歩いとったんよ、まさかコイツに効くとは思わへんかったけどな!」
最後の大きな一振りによって、元凶『孤独の魔女』は完全に消滅した...
|
|
|
「ほら、大切なもんなんやろ。」
「ありがとう.....」
魔女の後に残された、針状の突起がついたアクセサリー風な物質『グリーフシード』をほむらに渡すとアラタはニッと笑いながら言う。
「いっやー、今回はさ、ほむらちゃん居らんかったら魔女にどうしよもなくて詰んどったと思うわー、ありがとな。」
「私こそ、和泉君と遭わずに闇雲に突き進んでいたら、あの男に手を下して...他ならぬ貴方の手を焼くことになっていたかもしれない...魔女討伐の御協力、感謝するわ.....」
で...何気なく首を回し、ほむらが見向いた方向にアラタも目を移すと、
「彼はどうするの?」
「んまぁボクが、行き倒れってことで交番に運んどくよ。」
「今からだなんて、ご苦労様ね。さて、私ももう行かなきゃ。皆を待たせられない...」
間抜けな顔で大の字の花男だった男性の肩を担ぎ上げるアラタが振り返ると、ほむらは、腕の砂時計が具わった円盾に手をかざし、眩い光が放たれていた。
「そや、キミと話すのも、なんやかんや楽しかったわ。それでさ.....」
・・・・・・
「......!」
彼の言葉にほむらは目を見開いて驚きを示すが、やがて頷き......
「さようなら.....」
なんだ、良い笑顔してんじゃねえな。
微笑みかける彼女にアラタが軽く手を振ると、今度こそ光は互いを認視できぬほどの輝きを放った......
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーー
ー
「えへへ、ありがとう。」
「おーう。奥さんからもらった大事なもんつわれたらな.....」
預かっていたハサミを渡すと、雛菜が嬉しそうに微笑む。
「うん。言ったでしょ、私にとって命だって。」
命、か...どこかぼーっとした風に少年は辺りを見回す。
いつも通り、真っ直ぐに伸びた廊下、真っ青に夏を彩る空、何よりも整然と机の並べられた教室たちは、昨晩の激戦地であったことなど、ただの一人を除いては信じられないであろう。
だが同じく、彼には...彼だからこそ、あの事が夢ではないというのも分かった。
何よりも忘れられるだろうか。
「そーいや雛菜ちゃんさぁ...」
ん?不意に呼ばれ首をかしげる雛菜に、アラタは口を開く。
「もし、ボクの無事か美容師への道か片方を選び、片方を手離さなくてはならないなんて時が来たらどうするよ?」
「え!そ、それは.....」
へらと緩く笑いながらの質問だが、予想外に言いよどむ雛菜を見るとつい苦笑して、
「いや、べつに答えを決めなくてええよ。もしものことは実際に起きたときに考えりゃええ。」
「も、もう。急にどうしたの?怖いよぉ。」
すまんすまん、冗談のつもりが、そんなに悩むことかと苦笑しながらも、前を歩く雛菜に続くアラタは青空を見上げて考える。
...いや、忘れられないだろう。
「貴方ってどこまでも甘いのね。」
アイツ...
「魔女は、絶望と負に蝕まれた魔法少女の成れの果て。人間の生まれ変わりよ...」
あの時の...
「そんな結末も私は見てきた。だから私は最悪の結末を回避するために、何度も時間渡航を繰り返すのよ...!」
あの顔...
...いいや、世界が違ったって......
ーーーーーーーーーーーーーーーー
数秒してから彼女は、見慣れた街中に佇んでいたことを認識した。
あの出来事は.....そう思って右手を見ると真新しいグリーフシード、そこには『孤独』の刻印が施されている.....
やはり夢ではないのね。
何気なく黄昏ると、自分を呼ぶ声に気付き振り返る.....
『そや、キミと話すのも、なんやかんや楽しかったわ。それでさ.....』
「ほむらちゃん!」
「! まどか.....」
『どんなに辛いときでも、酷い目に遭う仲間を見てもうた時でも.....』
「よかったぁ、こんなところにいたんだ。」
「ええ....」
『いつでもキミにゃあ身近で支えて、心配してくれとる仲間が居るってことは忘れんといてな。』
「強力な魔女の反応を追うって言って、昨日から全然見つからなかったから、ホントに心配してたんだよお~。」
「っ!!ご、ごめんなさい.....」
『そだ、まぁたまにはボクのことも思い出してくれてもええんやで。』
「でも、その様子だと勝てたみたいだね、良かった。」
「ええ、勿論.....」
『世界が違ったってボクはキミが、キミにとってのベストエンドを掴めるよう健闘を祈っとるからさ。』
「さてと、じゃあ行こうかっ。」
「ええ、そうね.....」
「ありがとう.....」
「え?」
「何でもないわ、行きましょう...」
EP30ーーENDーー