「あらあらぁ、もう始まってはるねぇ」
竜斎邸に通ずる高速道路を封鎖しぞろぞろと停まる車両の数々の中、ひとつの前に佇む一人が爆炎上がる豪邸を見て呟く。
「さてぇ、そんじゃあ私らも行こか!」
もう一人が楽しそうに声を弾ませてボンネットから勢いよく立ち上がるが制止され口を尖らせた。
「連絡いれるまで待機しとき言うてはったやないの。」
「ズルいなぁあのコばっか楽しんでぇー」
「・・・」
二人の会話を聞き流しながら、黒服と共に佇む警察官は神経を研ぎ澄ませていた.....
...もっと見るEP29「Mystery Ballet『Resolution』
~夜戦攻防~」
「ひゅるるー!」
ふわりふわりと宛もなく跳ね回りながら手招きをするように腕を振ると、外壁の崩れた穴から豪雨が吹き込んでくる。
「こぉーらガキンチョ!悪いやっちゃな!」
バシン、そんなトゥナードの頭をハリセンではたき、襟からつまみ上げた日々喜が声を荒らげるが....
「ひゅるるー!」
「うっわ冷た!夏はこれからやぞ!?」
いきなりトゥナードが顔に吹きつけた冷気にたまらず手放すと奴はまた距離を取り始める。
「和泉君、なんなんだコイツらは!」
「YAKATAカンパニー。ご存知超越不審者を唆してる愉快犯供やで!」
優都とアラタがトルーパーを退けていると、所狭しにタイヤで迫ってくるのはロウダーだ。
「フッハハァ!言ったはずだ、宝石は頂くとなぁ!!」
「ロウダー、この家ブッ壊す気かコルァ!」
「どーうだっていい!オレ達ゃセレスティアさえ取れりゃこんなとこ用済みなんだからなぁ!」
そうヤツは息巻くが今はそれどころじゃない。
早く宝物館へ向かわなくては問題の人魚の涙が危ないと、アラタは焦るがこの狭い道では潜り抜けるのもままならない。
[バブルリード]
聞こえた音声と共に泡がタイヤの前に散らされると踏みつけたヤツはそのまま滑ってバランスを崩し、中庭へと転がり落ちていった。
振り返ると領也ーージーニアスが案の定手を振りながら澄ました声をアラタにかけた。
「さて、和泉クン。ヤツはワタシ達に任せて宝物館へ急ぎたまえ。恐らくキミの予想はアタリだ。輪田警備長!」
「すまんな、サンキュー!」
領也と優都がロウダーの落ちた中庭へと飛び降りて向かっていく様を見届ける暇もなく、アラタは宝物館へと走って行った.....
ーーーーーーーーーーーーーー
「ドォリャア!!!」「デッヤー!セェイ!」
目元から静電気を散らしながら鬼ヶ島が次々とトルーパーを殴り飛ばし、楠葉も続くように蹴りから正拳突きへと流れる動きで捌いていく。
「ぬぅ、どけどけぇ!ワシの家宝に手を出すなぁ!」
「お、落ち着け竜斎。警部達はご覧の通り、優れた力の持ち主だ。この騒動だってすぐに終わるはずさ。」
取り乱す竜斎を宥める雅彦、彼らを尻目にどうすべきかわからず半泣きのセラと、混乱する事態を見据える智大は右手首を擦りながら考え込む。
「随分と派手な手口だな。ここまで清々しいと一周廻って裏があるんじゃないかとさえ思えてくる...いや、難事件あるところにこの僕アリ、絶対に真相を....ん!?」
彼を我に返した轟音、それとともに壁が崩れるとけたたましいサイレンが響き、煙から現れる影に一同が蒼白した。
「な、なんじゃぁ、コイツゥ!?」
「フッハッハッハッ、遅かったな。」
聳えるように佇む影ーー紅い甲冑姿の巨漢は機嫌良く笑い、背の大剣を抜いて迫る。
「チィ....翌檜ォ、オメェさんは雑魚供蹴散らしてさっさと社長達と逃げろォ!コイツは儂が相手したるわァ!」
はい!楠葉が返事と共に竜斎達を連れて去る様を見届けると、振り下ろした大剣に、電流を迸らせた両腕を構えて受け止めると鬼ヶ島は言葉を続ける。
「オメェさん地下から来やがったのぅ。鎧戸の奴ァどうしたんじゃ!?」
「鎧戸?ああ、結構粘ってはおったがどかすのに苦労はしなかったぞ。」
距離を取ってから電流を纏った拳を引き絞り、一気に鬼ヶ島が叩き込むと後退した巨漢、ウォリヤも剣を構えて再び距離を詰める。
互いの拳と剣がぶつかり合い、競り合いながら牽制するなか、ひとつの影が飛び込んでウォリヤに一発叩き付けた。
「大丈夫か、鬼ヶ島警部!」
「おお、和泉!」
「久しいなぁ小童。うぬから来てくれるとは嬉しいぞ。」
己を見るなり目元を歪める奴とは対称的にジトリと睨むとアラタは声を荒らげて二撃を狙って飛び掛かった。
「ウォリヤこの野郎ぉ、つまんねぇ知恵使いやがって!」
「フン、なんのことだ?我輩は指揮に従って動くだけよ!」
和泉ィ!呼び掛ける鬼ヶ島に振り向くと、彼は電流の走る手で木刀をなぞる。
途端、バリバリと音を立てながら同じく電流を纏った木刀を構えると2人、頷き合ってウォリヤへ駆け出した。
ーーーーーーーーーーーーーー
「このぉ!なんなんですか貴方達は!警官の質問くらい!応えなさぁい!」
「クソ、キリが無い。何がどうなってやがる...?」
次々と迫るトルーパーが無言で迫り抵抗を確認するや否や、楠葉も負けじと拳を叩き込み、通路を確保していく。
前方を護れば横や後が空き、そこを攻める連中にも庵達警備員と共に対処していくが、トルーパー達は一向に減る気配がない。
そんな中で、ふと庵はひとつの違和感に気付いた。
警備員の数人が倒れている姿、それだけならトルーパーに押されたかと心配しながら覗き込むが、
「おい、お前ら。何こんなとこで寝てんだ!?」
まるで場には似つかわしくない面持ちで寝入る面々、更には後ろで驚嘆の声も上がり出す。
「しゃ、社長さん、金城さん!?メイドの皆さんまで、どうしたのですか!」
そう周りを揺さぶる智大の言葉の通り、警備員同様に竜斎達も眠りに落ちているではないか。
「一体何が....?て、させません!」
隙を突いて襲ってきたトルーパーを掴み振り払うと退け、再び後方を向く....
「て、芳村さん!?」
思わず驚いた視線の先、庵までもが地に伏せる姿に嫌な予感を抱き、まさかと視線を向けたその先に、奴は不敵に笑っていた。
ッ!!驚くも束の間に楠葉の意識が闇へと沈み、トルーパーへの対抗者の消えた現場には静寂が広がった....
ーーーーーーーーーーーーーー
「そらっ、クイック!」
レンのヨーヨーがアタッカの眼前を過り、隙を突いたところでクイックが蹴り込むが、アタッカも怯まずに脚を振り上げて打ち付け合う。
「にっしし、やるねぇ~。和泉アラタちゃんじゃないのはちょっと残念だけど、キミらもなかなか楽しめるねぇ。てぇりゃ!」
突き上げた拳に跳んで後退するとクイックはその勢いで踏みつけるように連続で蹴りつけるが、当然のように打ち返されてしまう。
レンが援護で放ったヨーヨーもアタッカが掴んで投げ返すと、彼は受け止める。
「和泉の言う通りだな。こないだの金色野郎とは訳がちげぇ、か....」
そうこう追いかけ合っていると不意に、裏庭に面した窓からとある光景がクイックの眼に写った。
見覚えのある人影がそそくさと駆け、何か妙なオーラを放ってから壁を垂直に滑るように門を乗り越える姿....
そういえばアラタはアイツが怪しいと言い、彼も経歴がよくわからない上に確か....
そういうことか!
ハッと閃いたクイックは通信を起動すると小声で一人に呼び掛ける。
「豊永、来てほしい!」
[なっ!?アタシかて変な雨降り小僧の相手中やし...!]
「なんとなく話が読めてきたぜ...!後で皆にも話す、ノってくれ!陽動には、陽動だ....!」
わかった!程無くして日々喜が飛び込むと、追いかけてきたトゥナードのためにアタッカが窓をカチ割り、暴風雨を吹き込ませた。
「にっしし。チームワークでやっちゃうの!?」
「ひゅるるー おれたち くませて いいの ?」
知らんわ!ハリセンを突き付けると日々喜は強く言い放つ。
「どーでもえー、邪魔するならドツいたるわコラァ!にーさん頼むで!」
「フッ、見せてもらうぜ?スカーレット・カメリアさんよぅ。」
トゥナードによる落雷を駆け抜け、拳を引き絞るアタッカに日々喜がハリセンを、レンがヨーヨーを一気に振りかぶった.....
ーーーーーーーーーーーーーー
しばらく後にウォリヤは爆風を巻き起こしながら逃亡し、鬼ヶ島が追う間にアラタが宝物館の安否を確かめに行っていた。
ようやく立ち止まって振り返る奴の姿が晴れる煙から現れると、再び2人は抗争を始める....
「アカン!鬼ヶ島警部!」
階段を駆け登って戻ったアラタが、ウォリヤと組み合う彼に声を上げた。
「人魚の涙はとっくにソイツが持ってやがる!」
「なんじゃと、鎧戸の奴は!?」
んなもんいねぇ!声を荒らげるアラタに疑問を浮かべると、彼はウォリヤに斬りかかる。
「コイツが鎧戸ガイなんやからなっ!」
「フッハハハハ!流石と言ったところか小童ァ!」
得意気に笑うヤツに鬼ヶ島共々蹴り込むと剣で防ぎ、距離を取りだす。
「ったく。ジャージ野郎から社長を助けただぁ!?笑わせんなや、オマエの濃い気配なぞすぐ感じたわ!あと演技下手すぎんよ!」
「フン!なれどうぬとて確証を得るまでは手を出せなかったのであろう?ことが起きてから動いただけで勝った気になるなよぉ!」
うるせぇ!アラタは跳びながら木刀を振り上げる。
「人魚の涙取り返せばボクらの勝ちなんやからな!」
どうであろうな!そうウォリヤが剣を勢いよく地に突き立てると強い衝撃と爆風が生じ、二人の視界を遮ってしまった。
姿を消した奴を追って煙を払う二人、しかしその先にあったのは....
「な、なんやこれ!?」
「なんじゃあ?翌檜、芳村、しっかりせい!」
楠葉や庵達警備員が通路に倒れ寝入っている姿だ。
まさかと思い少し探索すると案の定、竜斎や雅彦、セラといった非戦力の面々も同様の状況に陥っており、アラタが一人一人揺する横で、鬼ヶ島は顎をさすりながら違和感を抱く。
「全員無事なようじゃが、和泉!アイツはどこじゃ!?」
アイツ....?倒れる面々の確認をしてからそういえばと整理するなか、一人の男が思い当たる。
そう言えば彼はアイツの....
「ナァー、マジか!?」
慌てて立ち上がりキョロキョロと辺りを見回すと通信が入る。
[皆、クイックだ!犯人が逃走した、俺はソイツを追っている。]
なんやて!?驚くアラタを宥めながら、クイックは続ける。
[なーに、俺ならすぐ追い付くさ。それよりそろそろ整理しようぜ?真相ってやつをなっ]
[そやそや、アタシもずっと気になっとったわ。ってコラァそんな風吹かすな!]
[日々喜様、集中してください!]
[はん、俺は読めてきたぜ....]
[和泉クン、キミはクイッククンを追いたまえ!]
「そうじゃな、和泉!この辺の雑魚は儂に任せろォ!!」
領也に促され、鬼ヶ島の言葉を受けたアラタは彼らを残すことを渋りながらも強く頷き、ジェットボードを取り出した.....