17: ディジェイヌ
2026-07-12 18:39:30 NWExZjY0(34)
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どうやらクイックは最悪の事態を想定して人魚の涙のレプリカを作製したらしい。
手口としては何の変哲もないガラスの塊と....
「いやはや驚いたわい。特晶班にはどんな大層な技術師でもおるんかと思ったら、こーんなちみっこい奴なんじゃからのぅ。」
鬼ヶ島が感心しているのは掌におさまっている自動車のミニモデルーー楠葉が補足するには『カラフルコマーシャル』という特晶班所属の者らしい。
彼(?)は精巧なホログラムを生成する力を有しており、鬼ヶ島の要請に応えてガラスを伴ってやって来て、後はクイックの懐からガラスに人魚の涙のビジョンを被せることで敵を欺いた、ということだ。
「いっやー、いきなり荷物に擬態してクイックさんに渡すなんて怪しまれないかとヒヤヒヤしましたが....流石です!」
「ふふっ、貴女は経験として同行したというのに簡単に眠らされてしまったようですがね。」
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な!?苦い顔をする楠葉と同じく、乾いた笑いを浮かべた警官ーー堀壽も鬼ヶ島の部下で聖櫻の交番に勤めているらしい。
というか....
「そういや春頃酔っ払いのおっさん届けた時対応してくれたのって。」
「はは、気付きましたか。」
なんとなく思い出すと悪戯っぽく笑いながら彼は手を振り返す。
「しかしまぁ今回は皆お疲れじゃったのぅ!どうじゃ和泉、志藤。どうせ聖櫻なら乗せてくが?」
「うーん.....いや、ボクは旅半分電車で帰ろかな。」
「そうかい。ワタシはお願いするよ、少し寝かせて頂きたい。」
「では、ご協力ありがとうございました!」
「また聖櫻でお会いしましょう。」
領也が乗り込むのを確認すると三人が軽く敬礼をし、発進させたパトカーに軽く手を振って見送る....
※
「なるほどなぁ、この子がアツんぐぅ!?」
まじまじと興味津々に眺め回す少女、アネットが何か言いかけるが慌てて日々喜が口をおさえて苦笑する。
輪田優都達の属する警備会社は彼女の家系の唐澤グループのスジらしい。
「アハッハ、どうや、やっぱアホタ強いやろ~?」
「なるほどなぁ、日々喜はんが楽しそうに話すのも納得やわぁ。」
日々喜とアネットが何やら絶対言うなだのまだだの言い合う傍らで感心する八重、その三人の昨晩の立回りを思い返したアラタはふと何かを思い出す。
トゥナードの風を逆用して纏い拳を叩き込むアネット、流れるような鉄扇の動きでアタッカを制する八重、そしてハリセンを剣のように豪快に振るってロウダーの突進を打ち返す日々喜。
数日前聞いた通り、彼女らは関西でもトップクラスのハンターらしい、ならば....
なぁ姐やん達、改まった切り出しに不思議そうな顔をする三人に彼は口を開く。
「ボクのダチに強いハンターがおるんやけどさ、ソイツここ数ヵ月色々大変なことになっとるみたいなんよ。やからもしかしたら三人にもお世話になるかもしれへん、そん時はよろしくな....」
三人、顔を見合わせてからアラタに向き直ると小さく微笑み、ポンとアネットが肩を叩いた。
「まかせとき!私らスカーレットカメリアの実力、見せたげるからな!」
「せやせや、アタシらを誰だと思っとるんや。」
「まったく、また面倒ごとに乗っかってしまうんやさかい....」
じゃあそろそろと向き直ると車を用意した優都が溜め息を吐く。
「和泉君、今回はお嬢様の我儘に付き合わせてすまなかったね。」
「あっ、あーまぁボクも勝手に連れてこられたんは一緒やし、それに、姐やん達のお陰で助かったからあんまり言わないどいてな?」
「ありがとぉアラタちゃん!」
「ほらな、アホタも言うてるんやしぃ。」
「図に乗らない。」
八重から扇で小突かれる二人に頭を掻くと優都は返す。
「まぁ、今回は三人がいらっしゃらねば難航した部分は大きい、そういう意味では結果論とは言え日々喜様にもアネット様にも八重様にも感謝します。が....」
今一度顔を上げ、じとりと見据えながら彼は続けた。
「各位社長や家主より叱られても庇い立てはできませんよ?」
「まあそれはええわ、じゃ輪田ちゃん安全運転お願いな。」
「アラタはんもお元気で。日々喜はんがお世話になりました。」
「八重ちゃんが言わんでええやん。ほなねー、また落ち着いたら会おうな、友達のことも任しときー」
あの三人ならナツを託せそうやな、車が遠ざかってから力強く満足げにアラタは笑った....
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とはいえ....
[なぁ、やっぱ妙だと思わないか?]
[まったくだぜ、改めて考えると茶番も良いとこだ。]
帰ってからもクイックとレンはどうにも今回のことが気になるらしい....
「うーん、そんなにか?いつものYAKATAと不審者って感じやったけど。それにしてもあの人が、なんてなぁ....」
[大体よぉ、鎧戸がアンタを知ってるならなんで計画を中止しなかった?]
[そうだぜ。むしろ俺達が異常無しで解散した後に一気に攻めた方が争奪計画としては上手くいった筈だ。]
!?言われてみればそうだ...なにもなければ皆帰るなら無理してあの状況下で派手に攻めてくる必要もなかった。
[加えて、明川探偵は正直そんなにPAとして強い印象じゃなかった。それこそ探偵という肩書きだけで同行する意味があったのかも俺にはわからん。]
[ハハッ、下手すりゃアイツ通さねぇでロウダーつったか、アイツら辺が直接持ち逃げした方が成功したんじゃねぇか?]
違いない、レンの軽口に笑い合うクイックだがしかし、やがて真面目な声で話を戻したレンにアラタも神妙な顔をする。
[もしかしたらよ、YAKATAの連中は超越不審者供がチカラを振りかざして暴れること自体に意味を置いてるんじゃねぇのか?]
「え...?なんやその怪獣が出てこそヒーロー番組が成り立つみたいな」
[アラタ、真面目な話だぞ。なるほど、真意は解らんがカジツに含まれるエネルギーの発散、か...?]
「そう言えばYAKATAの奴ら、中途半端にPAを助けようとしないこともあったなぁ。」
物思いに耽る三人だがやがて、今しばらくは良いかと肩を緩め通話は解散となった。
続けて来ていた不在着信に繋ぐと、今度は少し懐かしささえ感じる明るい声がスピーカーに響いた。
[あらたんお疲れ!ヒトコト見たけどもう帰ってきたんだよね?その....良かったら夕飯一緒に、どうかな?]
「ん、なんでまた?」
[いやぁほら、今日お父さんもお母さんも遅いし、それに....『約束』のこともあるから、ね?]
「......はは、せやな。」
「ありがとっ、待ってるね!」
約束....ふとその言葉を思い出し、緩く笑うと彼女は嬉しそうに礼を言いながら通話を切る。
さてと、立ち上がるなり今日貰った報酬金を探りだす。
結局竜斎は人魚の涙が手元にあるならなんだって良いらしく、あれだけの襲撃を受けながら元の提示額を変動しなかったようだ。
気前が良いにも程があるとは思うがまぁありがたいことだ、どういう系の店がすきなんやろ、そんなことを思いながらアラタは学校を出ていった....
EP29ーーE N Dーー
とろろ昆布....意外と趣味が渋いんやな、そう思いながら味噌汁を軽く飲み、他のおかずも程好い味付けで堪能していると向かいで雛菜が嬉しそうに微笑む。
「どう、かな?」
「んっ、旨いわ。どっか行くんか思うたら、わざわざありがとな。」
「ありがとう。まぁそりゃそうでしょ。」
「え、そうなん?」
「そう。」
そっか....でもま、雛菜の言葉に笑いながら答える。
「まぁ拍子抜けはしたけどさ、やっぱ高いホテルだの料理だのってのはどうにも馴染まんよ。こういう普通の飯がボクは一番好きやな。」
「ッ!あ、ああ、うん。その、ありがと。えへへ....」
?不意に気まずそうにはにかむ彼女を不思議がりながらも、暫くは平和な談笑と夕飯を楽しんでいた....
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