よし、断言しよう!!
一旦集まったミーティングルームにて、開口一番の声に視線が集まる。
得意気にパイプを吹かす智大はひとつ咳を払い、真上に挙げた指をそのまま垂直に下ろしビシリと突き付けて言い放った。
「狙われたのはっ!ズバリ、"セレスティア"だッッ!!!」
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EP28「Mystery Ballet『Debate』
~Enigma Labyrinth~」
アホか、やれやれとため息を洩らしたのは日々喜だった。
「今そのことについて話をまとめて行くんやろ?」
「イヤー、すまないね。前回(サッキ)までタイトルでしか言及されてなかったから一応と思ってね。」
ハハハと頭を掻く彼に一同も思わず苦笑する。
なぁ、次に口を開いたのはアラターー一連のやり取りで一人表情も変えずキョロキョロと見回していた少年だ。
「セレスティアって何や?」
・・・
智大に呆れていた彼らの大半が、今度こそ勢いよくその場でズッコけだした。
「和泉クン、依頼状読んでないのか!」
「読んだよ?前置きが長かったからとりあえず力を貸してってのは把握しとるわ。」
オイオイ....叫ぶ領也の言葉にキョトンと返すアラタを一瞥したレンが肩を竦めた。
「アホター、セレスティアくらい今回完全部外者のアタシかて知っとるで。」
「やれやれ、俺が解説してやるよ。」
日々喜のヤジに続けてクイックが立ち上がると指を弾いて言葉を続けた。
ーー『セレスティア』
正式名称は『人魚の涙』
紅く艶やかな輝きを放つ宝珠の原石だ。
海底で長年眠り続けたソイツを買い取った竜斎社長の命名であり、海底にあったこととその神秘的な光沢に由来している。
海外に紹介される際に訳された
『 Seiren's-Tear(セイレーンズティアー)』
から半ば略される形でセレスティアと呼ばれるようになった訳だ。
「俺が主人だったら迷いなく雅さんに捧げたい逸品だねぇ。」
「なるほど、つまりあんさんにはセレスティアを狙う動機があると。」
なッ!?流すように呟いた日々喜の言葉に視線が集まるクイックが思わず方をすくめる。
「馬鹿を言うな、雅さんは堂々とされている御方だ。奪ったモノで喜ぶ筈がない。打倒鳳と息巻くキミならわかるだろう?」
ステイステイ、静かなる熱気に苦笑しながら手で制すると日々喜は返した。
「ほんなんジョーダンに決まっとるやん!『ボケる勇気、ツッコむ優しさ』言うやっちゃ。」
・・・悪趣味だ。少し熱が籠ったか、苦笑するクイックにしかし日々喜は悪戯っぽい顔を戻さずまた口を開く。
「でも、久仁城のハートは宝石くらいでオチんで?」
「そうじゃないんだよ、俺があの方にそうしたいだけだ。」
なんだって良いよ!ドンと机を叩いたのは本件依頼人、社長・竜斎だ。
「ワシは犯人探しがしたいんじゃないしなんでも良いから人魚の涙の護りを固めてくれぇ!」
ジタバタ机を叩いて泣きそうな声を上げる彼にふざけすぎたかと反省し、その場は一旦解散となった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・」
ズカズカと巡回をする男ーー鎧戸ガイは淡々と辺りを見回して歩を進めていたがやがて、後ろから迫る気配に気付き、飛び込んで来た脚にガードを取った。
うりゃぁ!蹴り込んできたのはアラタだ。
応戦するように固め技を掛けようとしたガイをひらりとかわし、更に迫る拳を拳で叩き返す。
「ちょっと!何してるんですか!?」
かわされるも横からアラタにハイキックを見舞い制した巡査・楠葉が声を荒らげると悪びれる風もなくアラタは軽やかに笑う。
「いっやーボディガードの鎧戸さん、鬼ヶ島警部が強い強い褒めとったからどんなもんか試したくてなぁ。」
「警部がやってたの腕相撲ですけど!?」
アラタにツッコむがしかし構わず少年はガイに目を向けた。
「しかしホンマ強いなぁー。ところであんたボクの方見てビックリしてたっぽいけどアレなんで?」
・・・フン、一息洩らすとガイは口を開く。
「お主には関係無いことだが。お主の軽薄そうな態度と裏腹にデキる気配を感じ取ったまでの事よ。」
へぇー、彼の応えに舌を出してアラタは得意気に笑うが彼は厳かな無表情のままだ。
「ハハッ、褒められてしもうたー。」
「いつ来るか判らぬのだ。気を抜くな...コ、小僧。」
一瞬 引っ掛りを抱き 神妙な表情を出すがすぐにニッと笑って手を振りながらアラタは去って行く。
※
「ほほう、八人でそれぞれ一階と二階に別れて手洗、浴場、居間、応接室、会合室、庭園、門付近、社長の自室付近...と。」
浮かない顔で当時の同僚と振り返りをしていた庵とセラの話に、智大はメモを記して相槌を打つ。
「で、居間の付近で俺とセラさんが出くわして危ないから送っていこうとしてたんすよ。」
「なるほど、つまりは偶然にも全員、位置関係的に芳村が近かったから一番に来られただけで特別宝物館に近い奴は居らんかったわけじゃのぅ!」
はい.....ですが、庵は心配そうに鬼ヶ島を見返し、話を続けた。
「なんか皆妙に食い違うところがありまして....当時の連中に召集かけたら2,3人くらい九人いなかったかって。さっきのお話通り集まったのも八人なんですけどね。」
え!?驚いたのはセラだ。
心なしか顔も青く見える。
「芳村さんも、ですか....?実は私もその日のメイド内の担当では買出しでお昼頃四人で行った筈なんです。でも、二人が五人いたようなって.....」
でも!首を振り先程のメイド会合を思い返すと力強く言った。
「確かに全員本来の持ち場に着いていたのは確認できたんです!」
「花井さんまで!?どうなってやがる...」
「うええ、ここに来て幽霊騒ぎですかぁ~?」
ゲンナリと愚痴る楠葉と汗を滲ませる庵の脇でノートを取りながらアラタが首をかしげる。
「警部殿。」
「んん?オメェさんか。」
と、鬼ヶ島が振り向いた先にはクイックだ。
こちらへと彼が呼ぶと二人は居間へと歩いていった。
「そうだ、そん時変な紙が残されてましてね?お巡りさん持っていてください。」
庵が楠葉に差し出した紙を眺めると、
「どれどれ?」
「わ、ちょっと志藤さん!」
彼女の後ろから伸びた手がするりとメモを取って一頻り眺め出すと小さく笑う。
「サンはいらない。コレは和泉クンの方が良さそうだ、持っていたまえ。」
勝手なことをと顔をしかめる楠葉をよそにアラタも目を通した。
デカデカと書かれた『Y』一文字の脇に線で潰された『20XX.6/XX』の表記と書き加えられたのであろう『20XX.7/XX』の表記。
後者が今日であることを考えると前者は事件当時だろうか。
「なんやこれ」
少年は首を捻る。