「んーーー......」
前から気になってたんだけど....雛菜がふと口を開く。
手元にあるのは紐のついた白い円筒缶...所謂自販機サイズの物が数個だ。
「よく外国のドラマとかでも見るよね、車の後ろに付いてる缶。コレどういう意味があるのかなってさ~」
さぁー、対するアラタはあくびをひとつ、
「幸せですアピールやないのぉ?外国人は派手なの好きやし。」
夢がない、頬を膨らませる雛菜に頭を掻く彼は渋々ケータイを取り出す。
「...祝福と魔除けやってさ。」
「へぇ、なるほど~...だから音を鳴らすんだ。でもちょっと騒がしいし、気を遣うよねぇ。目立つし.....」
...もっと見るけど、デフォルメ調の自身の似顔絵を描き込んだ缶を見せながら彼女は笑む。
「発想がお洒落で私は好きだな、ウェディングカー。それにしても撮影にピッタリの良い天気、テンション上がるよ~。」
言葉通り、青く晴れ渡った空に、衣装体験もといモデル撮影とはいえ被写体を祝福するように太陽は爽やかな光を注ぐ。
「最近ずっと天気が不安定だったから正直心配だったんだぁ。」
「ああ、せやな....しっかし雛菜ちゃん元気やなー」
背を伸ばす雛菜に対し、実に6月らしい刺客達の数々を思い返すアラタは複雑そうに返す。
それにしても雛菜は嬉しそうだ。
思わずそんな言葉を出すと雛菜は呆れた目を向けてくる。
「当たり前でしょ。折角の機会なんだもん、全力で楽しまなきゃ。皆のヘアセットも私がさせてもらうの。」
ほぅ、なるほどそれもあるのかとアラタは彼女の言葉を聞きながら小難しい羅列の刷られたプログラムに目を通す。
「スプレーにカーラーと準備はばっちり!本当の式はもっと大変なんだろうなぁ...今日の撮影何するんだろ。」
ひょいと隣から覗き込む雛菜は度々感嘆をもらす。
結婚式ねぇ...その様子を見るに色々と詳しいみたいだが生憎自分はサッパリや、流れるままに動くしかねぇなぁ。
そう思っていたアラタはふと、
「あ、そうそう。私は皆のセットが終わってからだから少し遅くなると思う。私のは着替えてからのお楽しみだからねっ」
「アッ!!」
ど、どうしたの?突然の叫びと共に軽く手を叩く彼に思わず雛菜も驚くと、少年は力強く立ち上がり思い出したように言う。
「 誓 い の キ ス ! ! !」
「そんな冗談言ってると丸刈りにするよ~。」
EP24「いつかまた....」
「いーのっ、私のことは気にしないで....!」
「だぁって、寂しそうなんやもん。」
軽くあしらう女子の後ろをそれでも付きまといながらアラタは言う。
「茉莉ちゃんだって出たいんちゃうの?」
・・・出たい....アラタの言葉に茉莉は一瞬たじろぐ、が、
「でも、私にだって拘りがあるの。」
「そのコダワリで貴重な体験ひとつ潰してもか?やりたいこと抑えるのはあかんで。」
ウンと頷く彼女はひとつため息をついて言い返すと、
「そこまでして何を求めてるの?」
途端にアラタも弱ったように頭を抱える。
「イヤ、"患者"に脅されとるんよー、茉莉ちゃん参加させなきゃブッ飛ばすってぇ~」
「ダウト、大体カンジャって何よそれ.....じゃあ私行くねっ。」
聞いて損した、どことなくそんな感情を滲ませたように言う茉莉にアラタはムッとする。
「へん、なんーやアホ!アホアホアホー、お前なんか成績よくたってアホなんやからなー!」
ベェー!舌を不気味に蠢かしながら悪態を放つアラタだったが後ろから掛けられる声に振り返る。
「どうしたんだよアラター、ギャーギャーうるせぇなぁ。」
「アッ、えーと....男子Aいって、いて!!」
言う端から叩かれ顔を向けると、彼は怒りを露に声を荒げる。
「串間 淳だ!勝手にジョーとか呼んで忘れんな!」
しょうがねえじゃん。頭をさすってアラタも返す。
「呼び方は別にええやろ。まぁちょいと揉めてな。ところで泉ちゃんはどした?」
「どーせろくでもないことやったんだろ。もう俺らは終わったよ。」
ほっとこ、淳の呆れる声に不貞腐れるアラタだが、
「あ、こんにちはアラタさんっ。」
元気の良い声に顔を向けると思わず息を飲んだ。
フリルが幾重に備わった鮮やかなヴェールに、結び綺麗に纏まった美しく長い銀髪、それをより際立てるヘアアクセサリー.....
「ゆ、ゆーりや、ちゃん......!?」
「ふふっ、どうですか?その...似合ってますか?」
すげー、ドレスの裾を軽く摘まんで会釈をするユーリヤに感心する脇で、アラタはワナワナと震えだし、淳は不審がる。
「おいおい、どうし「早く準備せぇ!!」
また始まったか?言葉も聞かずに叫ぶアラタにやれやれと首を振ると言葉を続けた。
「今度はなんだよ、花束か、スーツか写真撮れってか?それとも神父?」
ちげーよ!面倒臭そうに聞く淳に怒号を飛ばすアラタにますます困惑すると彼は答える。
「アホか、この場合『 御 祝 儀 』に決まっとろうがァアア!!!ワァアー!!!」
「わわ、ど、どうしたんですか?アラタさん!」
唐突な号泣に狼狽えるユーリヤと暴走するアラタ、淳は首を振るとアラタの肩に手をかけ深呼吸をひとつ、
「これ以上は危険だ......!」
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「なーにが御祝儀だ、アホはお前じゃい。なに後輩の晴れ着姿モデルに泣いてんだよ。」
苦々しく吐き捨てられると、頭に瘤を作ったアラタはグスグスと目元を拭いながら途切れ途切れに言う。
「だって、ユーリヤちゃんの、あんなカッコ見たら...なんや、きっとあのコにもそんな日が、来るんやなって......」
「イヤ何の目線なんだよ。親父か!?」
場都の悪そうな面持ちと裏腹に突拍子も無い返答を受け、いよいよ呆れるが、アラタは当然のように力強く返す。
「姪に対する叔父のような目線だ。」
「ニッチだな、初めて聞いたわそんな思想。」
「叔父様って呼ばれたい。」
「お前末期だよ」
アラタの発言に思わず匙を投げると、
「あ、いた!!」
向こうから勢い良く近付いてくる影に2人は気付き、それが瞬時に距離を詰めるとアラタの袖を掴んで颯爽と引き返し出す。
「ちょっ、由紀ちゃん!?由紀ちゃーん!」
「ったく、何やってんのよ、ふらつくんじゃないの!」
「おおい!ジョー!!由紀ちゃん鎮めてくれ!」
・・・アラタの懇願に困ったように顔を見合わせる彼だったが、
「まぁ、八束サンなら大丈夫だろ。多分...」
頬を掻いて二人を見届けていた。
ハイ!ひとつの部屋にアラタ放り込んだと思えば、あろうことか由紀恵は施錠までしてしまったではないか。
「全く、着替えてもいないのに勝手に歩き回っちゃダメでしょうが。撮影時間まで大人しくしなさい!」
何!?流石に焦るアラタがガチャガチャとドアを揺すっても手応えがない。
「出してぇ!!由紀恵さん!出してくれ!由紀恵さァアん!!俺は俺の場所に帰らなきゃ!!」
叫ぶ彼に深いため息を吐くなり由紀恵は去ろうとした歩を止めて戻ってくる。
「別に出したって良いわよ?」
その言葉に一瞬表情を緩めると対称的に彼女は不敵に口角をつり上げる。
「けど、場所がどこにあるか、判ってるのかしら? 」
ゲッ、自分の言葉におずおずと後退するアラタに気さくなウィンクを向けて由紀恵は良い放った。
「時間になったら案内するから、待ってなさいよ?」
「・・・」
出不精な犬がリードをつけられたように項垂れ、泣きそうな視線を彼女に向けながらアラタは沈黙した。
「ンだよもっと見たかったのになー」
やむを得ずどうしたものかと思案する彼の許へ、しばらく後に通信が響くのだがコレはひとまず置いておこう.....