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「愛はお金じゃ買えないから、考えたんだよ?女の子はサプライズが好きだって、聞いたのに。」
「なんも考えとらんやんけ。」
箱から伸びるリボンを木刀で斬り捨て、アラタはボソリと呆れながら返す。
辺りはヤツが散らかした箱の跡で四角く抉れたり凹んだりと散乱している。
こうしていつまでもだらだらやるわけには行くまい、今日は早期決着の予定だ。
「ラッキーボックスチャーンス!僕はどーこだっ!」
両手を振り翳し辺りに箱を降らせたりアラタを閉じ込めんと発生させていたヤツはやがて自らを箱で覆いつつ辺りにもゴチャゴチャとキューブを落とした。
「チッ、めんどいなコラ。」
...もっと見る適当にひとつ、木刀で箱を殴り付け、手応えをみたその刹那、爆風がアラタに被った。
「・・・」
プッと煤を吐き捨て、燕尾服を脱ぎ捨てたアラタは一気に2,3個の箱を木刀で薙ぎ払った。
いくつかの爆風が直撃しても気にせず、少年は手当たり次第に箱同士をぶつけ合い、誘爆させながらその数を減らしていく。
「そんな、バカな!?あんなボロボロになってもお構い無しで!?差詰めキミは式へ向かう途中の花婿だったハズ、ナニ考えてんのぉ!?」
どこからか聞こえる箱男の困惑する叫び。
それを聞くアラタはニッと笑いながら言葉を投げつけた。
「ハッ、そう思うんならスッ込んどれアホ!少なくとも今はンーなこと気にする暇もないくらい焦っとるわ、そらよ!」
残り少ない箱目掛けて勢いよく木刀を叩き付けると、地を這う衝撃波が直撃し、本体の箱もろともに爆破を引き起こした。
「うわわ、うわぁ!!ゲッホ、このぉ!」
「な、クソしまった!!」
躓きながらも持ち直したヤツが再びリボンを放ち、ふらつく隙を突かれたアラタは手足を絡め取られてしまう。
おわり!誇らしげに箱男が叫んで手を握りしめると、アラタの身体の周りを一瞬にしてエネルギーが覆い、長方形のキューブがただそこに直立していた。
「さぁ、ここからが僕の最後のプレゼントタァ~イム。満身創痍のキミを見て僕の花嫁さんはどんな顔するかなっ。『あんだけ啖呵切って情けない男!』なぁんて、やっぱ僕のが良いわ~、なんてね!」
ーーどんな顔するかーー
縛られたままアラタはその言葉を反芻し、もはやはしゃぐ箱男の戯言は耳に無かった。
ーー「え、写真撮影?」
「うん。やっぱり、憧れって言うか、さ.....」
「別にええよー」
「い、いいの?」
「だって、別に断る理由もあらへんし、撮影なんて、なぁ~」
「ありがと!さ、帰ろっ!」ーー
雛菜、ちゃん.....意を決したようにお願いしてきたあのコの輝く程に嬉しそうな顔.....
「さぁ、欲しいのはパンチにキックにチョップ、悪役に相応しいのは~.....ぎゃあ!?」
箱の周りを歩く箱男目掛けて、いきなりアラタを入れた箱が倒れこみ、ヤツを弾き跳ばす。
アラタ一人が入るサイズに調整したキューブは、手足の利かない彼が全身を使って転げ回るには逆に丁度良い大きさだった。
我武者羅に跳ね回り、自分自身が後ろに倒れる覚悟で跳ねて相手を蹴りつけ、上半身ごと殴り付ける。
「うわーん、もうおしまい!」
突拍子もない猛攻に堪らず、指を弾くとキューブが解け、縛られたアラタは勢いよく倒れ、
「ふへへー、僕の勝ち!」
新しく作ったキューブを彼の上から落とし、激しい爆発が起こる。
「こうして、度重なる妨害にも屈することなく立ち向かい続け、悪を打ち倒した暁に愛しの花嫁と共に新たな人生を歩む、僕なのであった。」
爆風を背にうっとりと微笑むと、ナレーションのように独り言をもらし、先程の控え室へと戻ろうとする.....
ーーありがとよ......!ーー
!?背から爆風に紛れて聞こえた声に思わず振り向くと、ヤツが"走ってきた"。
「な、な、なんってことだァア!?」
次の瞬間振り抜かれたふたつの拳が箱男の頬と鳩尾を捉え、目が飛び出そうな顔で驚愕する奴を吹き飛ばした。
くぅぅ、まさか爆発性キューブにしたばっかりにリボンを千切ってしまうとは.....
いや、それ以前になんであれだけのダメージでここまで動けるんだよ!?
そこまで考え、こちらを見据えるアラタと目が合うと立ち上がり......
「もういい、ママに言いつけてやる。お前なんかと遊ばないよーだ。」
ひとつ、大きな箱を生成すると入り込んで蓋をしてしまった。
「ごめんねぇ、ここに入っちゃったらもう大体の衝撃には強いんだぁ~」
おどけた言葉に偽りはないようで、アラタが木刀で力一杯殴り付けようともビクともしない。
やれやれ、アラタは肩をすくめると声をかける。
「敵わへんわ。でもよ、大体の衝撃言うたら、限界はあるんやろ?」
「そうだねぇ~、特に勢いの強い衝撃だと、流石にどうなるか僕も判らないかなぁ~。キミには無理だと思うよ?」
余裕であろうか、ベラベラと得意気に喋る様に内心フきながら彼は続ける。
「よせよ、心配しとるんや。」
心配?いよいよ爆笑寸前になりながらも真顔を保って箱男に言葉を返した。
「こっちにダンプが突っ込んでくるのが見えるわ、しかもあの感じ、多分晶力搭載でめっちゃスピード上げとるなぁ。このまま行くとお前の箱直撃するんやけど、大丈夫か?」
「・・・え!マジで!?」
慌てて蓋を除け、飛び上がった箱男を当然逃すまでも無く、
「アホがぁっ!」
「うわっずるい、それズルい!!」
顎から一気に蹴りあげ.....
「こうして理想の花嫁さんに会えないまま僕の人生、後半へ~続く~!!」
「ィやっかっまっしィ!!!」
そのまま木刀の一振りで斬り飛ばした......
はぁ.....落下して気絶する箱男を気にもせず、ひとつ舌打ちをして燕尾服を着直すと、ふと、携帯の新着トークに気付く。
『@8tuka; 新垣さんのためだもの、教えてあげる。
時間がどれくらいかかるかわからないけど急ぎなさいよ?』
由紀ちゃん.....アラタは添付された地図画面と会場の外観写真に軽く目を通し、苦笑する。
「ありがとな.....」
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「あらたん.....」
心配そうに空を眺めていた雛菜は小さく呟く。
「ありゃー、来なかったね。」
結局時間を迎えるも彼が来る気配はない。
残念そうに言う奈央に彼女も頷く。
まぁ、仕方ないか.....言い聞かせるように思いながら雛菜は前の撮影者と入れ替わりで歩きだした......時だった。
「すまーーーーーん!!!」
!待ちわびた声を上空から聞き、思わず振り返った。
飛来する赤いジェットボードから身を投げるように飛び出した影はそのまま芝生に打ち付けられ、転がりながら立ち上がる。
「.....あらたん!」
「ヒヒッ、悪りぃ雛菜ちゃん。お待たせっ。」
笑い、軽く手を振る彼に顔を綻ばせながら歩み寄る雛菜は、ふとなにかを気付き、彼の頬に手を添える。
「んあ?お、おいその手で触ったらアカンよ。」
「もぅ顔中煤だらけだし、髪もグシャグシャだよ、ちょっと動かないで。」
場都悪く言うアラタに、雛菜は照れくさそうに笑い、櫛を取り出した....
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自室の机で、雛菜はぼーっと写真を眺めて口許を緩める。
自分を横抱きに抱えるアラタの姿...
その首に笑顔で腕を回す自分。
思い返すのは撮影後のことだ.....
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「ねぇねぇ、着替える前にヴァージンロード歩いてみても良いかな?」
「え、ええよ?」
特に深く考えないアラタの言葉に甘え、一歩一歩、踏み締めて歩く。
うわぁ、やっぱりただ歩くだけでも緊張するなぁ.....そう思っているうちに歩き終え、くるりとアラタに向き直ると、まだ大事なことを聞いていないと思い出した。
「ねぇ、どうかな、このドレス?」
ん?アラタはその言葉にあーっと少し考えてから口を開いた。
「まぁ、ドレスのことはよくわからんけど、こういうのとか珍しいな思うし、君らしくてエエと思うよ。」
「っ!あ、ありがとう.....そう、この帽子に合う髪型を考えてたからね。そう言ってもらえるのは嬉しいな。」
彼女のドレスの最大の特徴たる、レースのついたハットのアクセサリを軽く直しながら彼女は得意気に笑う。
ねぇ、こんな格好で二人きり、黙ってもいられず雛菜は再び言葉を繋いだ。
「あらたんが本当の新郎さんになった時も、へアセットは私に任せてほしいな.....ダメ?」
「あー....別にええけど。そんな日がホンマに来るかはわからんで?」
ハハハと笑う彼に流されるつもりもない、
「じゃあ、そんな日を迎えられるように私は応援してるからさ.....キミも、私のことを応援しててくれる?」
「んあ?キミの夢ならいつも応援しとるよ?」
そうじゃなくて.....言いにくそうに少女は少しずつ口を開く。
「私は旦那さんの髪も毎日セットしてあげるのも夢だからねぇ.....そうだね、いつかまた、私がこの格好を出来るように、さ.....」
ーーそして、その時一番近くで...隣で見ていてくれるのが、今と同じ君でありますように.....
「せぇやな、夢のために頑張る奴を応援するのは好きやからな。」
勢いで出しかけた言葉を押し留めても気づくハズも無く、彼と私は笑い合う。
そう、いつかまた、ね....
EP24ーーE N Dーー