「アーラター....」
「ナツっミカド...今日はおのおの一人か。」
「どーゆー意味だっ」
「拗ねてるらしいから来たわ。三角トスでもやろうぜ。」
「コノヤロ、ボクが球技苦手なの知ってぇ~」
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「どぉおして貴方達はすぐにそうやってぇ!!」
度々看護士の怒号がロビーに響く日々も終え、"彼"が復学してから数日が経った....
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・・・・・
"湿気"!!
圧倒的"湿気"!!!
アラタはその気候に苦悶した。
「(こんなら今日くらい朝練は中で良かったかもしれんなぁー)」
空を映したように爽やかな淡い青を放つ氷菓を口に突っ込んだままボーッと歩いていると、不意に声が掛かる。
「ちょっと、朝っぱらからだらしないわよ?」
「転んだらどーすんの?おはよっ」
「んばっ、おーう由紀ちゃん雛菜ちゃん。喉イッたくらいでボクは逝かないから大丈夫や」
棒を引き抜き、二人に笑いながら応えると彼女らは呆れてため息をつく。
「全く、生身で全身感電したのに一週間するかしないかで退院って、どういう身体してるのよ....」
ため息をつく由紀恵の肩をポンと小突くとアラタは軽快に笑う。
「アハッハ、まぁホラ。ボクが居っても居らんくても、由紀ちゃんが右往左往するのには変わらんし~ブバァッ!!?」
言い終わるより先に頬に迅雷の如く拳がめり込んでアラタがひっくり返った。
「アンタが来ると苦労が二倍になるわよ!」
「もぅ。退院早々に何してるの?」
白眼で転げ回る彼の後襟を掴んでやれやれと首を振りながら雛菜はアラタを引き摺って歩を進める....
「それにしてもまだ6月なのにホンット暑いわね。」
「うんうん。これは異常気象だよねぇ。もしかしてこれも不審者の仕業かなぁ?」
「そんーな、暗黒結社やないんやからさって言いたいけど、充分に在りうるわなぁ。雷男雨男の次は日照男かぁ?」
そんな三人の会話に呼応したのか?不意に空が陰り、一瞬にして彼らの視界も薄暗くなるばかりか、程好い風が吹きはじめて絡み付くような湿気も和らいでいった。
「ふわぁ、だんだん涼しくなってきたね~」
「おー、ええやん。話の解る空で助かるわー」
「いや、いくらなんでも不自然すぎると思う....て、ちょっとなによコレ!流石に風強すぎでしょ!!」
そんな由紀恵の訴えを聞き入れる筈もなく、風は段々と勢いを増して道並の窓もガタガタと音を立てていく.....
「た、たしかに、これはちょっとぉ.....うわわ!?」
「きゃあっ!?」
慌てて裾を押さえるも虚しく強風は二人の制服を巻き上げて、
「......ッッ!!!」
アラタは息を呑んでたじろいだ。
本来なら決して見られぬ鮮やかな色遣いの広がった2つの世界に目を背ける判断もままならず、少年は眼を見張った.....
そんな彼に、少女たちは気恥ずかしげに紅潮しながら睨み付ける。
ーーも、もぅ...馬鹿。ーー
ーー責任、と、取りなさいよ....?ーー
EP23『モロテニフラワー』
\うそですっ!/
「・・・うーん、頭と目が重いよー.....」
「最ぃー悪.....」「バーカ.....」
冷淡に言い放つ由紀恵と雛菜の後ろから、所々に刺さったハサミを引き抜きながら、瞼に干渉するほど腫れ上がった顔のアラタがフラフラと手探りで続いて行った.....
EP23『ビネツアメ』
「疲れた。」
白いスーツを着た金髪の少年が肩を回しながらボーッと帰路に着く。
警備員で夜勤を終えた彼はひとまず食事を取ってから仮眠に入ることを考え、街中の店を物色する。
と、黄色い看板に力強く書かれた文字が目に入るではないか。
『Majiナンバーワン』
「カレー専門店マジワンか......たまには悪くないか。」
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いらっしゃいませ、マスターの声が歓迎するなり手を軽く振り、カウンターに腰を下ろしとりあえずオーダーを入れる。
「いやー久々の夜勤は疲れたな。さっさと食って寝るか.....」
何の気なしに店内のテレビに目を向けると...
『ラッカーマンの被害、相次ぐ。』
[最近、首都圏の商店街で、次々と落書き被害が出ており、住民も頭を抱えているようです。]
テロップになんだと顔をしかめると、淡々とキャスターが読み上げながら、派手なスプレーを巡らせたアメリカンストリートよろしくの光景となったシャッターに憤る住民の姿が映る。
[なお、ラッカーマンと呼ばれておりますが、未だに犯人の顔も判らず、足取りも掴めておりません。]
「ほぉ。随分な小者だなぁ。」
しかし怪しいな、軽口を漏らしながらも彼はいぶかしむ。
大掛かりで文字通り目立つ事件を起こしているのに顔すら割れていないとは......
いや、やめておこう。
眠気でマトモに思考を纏められる筈もない。
そこまで考えると、不意に一筋の強烈なにおいが漂うと共に目の前に出来立ての皿が置かれた。
一瞬面食らいながらも一匙口に運ぶが、その味は至って普通、匂いもそそる程好い味わいで先程の感じたものとは違う.....
マスターが出てきた厨房に目を向けると、暖簾の向こうでボコボコと煮える音に、湯気までほのかに赤く色付いた鍋があるではないか。
恐らく暖簾に扇がれてこちらにきたのだろう。
思わずマスターに声をかける。
「すまない。今凄く刺激のあるにおいがしたんだが.....」
「おや、不快でしたらごめんなさいね。裏メニューですよ。」
裏メニュー?少年に頷くと彼は言葉を続ける。
「常連さんで一人だけいつも食べる変わったお客さんがいましてね。そもそもその方の要望で始めたんですよ。」
なるほどなぁ.....苦笑するマスターの話に相槌を打ちながら彼はスプーンを進める。
当然、今の話から何かを感ずる由もなかった...
[次のニュースです。聖櫻地区の一帯で不安定な暴風雨が発生中です。区内や近隣の方はご注意ください。]