61: ディジェイヌ
2026-07-05 21:05:21 ZTJhNWFm(50)
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大風吹き荒ぶ街中、水溜まりを踏み散らしながら少年は駆ける。
「ったく。なぁんやコレ。裏がありそう言われて色々探してみたけど見えてこんな......!!」
聖櫻だけに余りにも不自然な局所的嵐、恐らく超越不審者の筋だろうか。
しかし雨男や雷男は既に鎮圧しており、そもそも今降り頻る悪天は連中の比ではない勢いだ。
と、なれば.....考えながら走るなか、進むごとに雨の勢いが増していることに気付く。
大本は近いか!?
呼び出したジェットボードに飛び乗り、風に逆らいながら一体を見回すと、やがて、一つの竜巻が柱状に立ち上っている場所を見付ける。
「あれは......!っと、だんだん雷まできよったか!」
...もっと見る竜巻に向かいながら、次々と降り注ぐ落雷をかわすと公園に近づくが、不意に一筋の閃光が機体を掠めてバランスを崩した。
「うわっ!?ヤッッベ!!」
投げ出されながらもなんとか着地し、公園に入ると確かに中心部のようだ他より風も雨も強く、見通しが悪い。
「やれやれ。何がどうなっとるんや......て!」
あれは.....!?やがて見据えた先、小柄な影が遊具の上に腰掛け、足を軽く振りながら空を見上げているではないか。
「な、なんやお前!!」
思わず駆け寄るとそいつは不思議そうにこちらへ顔を向けてきた。
「......?あんた だれ?」
レインコートを羽織った小柄な少年が棒飴を咥え、虚ろな眼でアラタを見つめるなり降り立つ。
「お前こそなんや?もしかしなくてもこの嵐雨、お前がァアア!?」
ひゅるるー、ヤツが一息吹くとアラタの身体が一気に後退させられた。
「ヤバイ、こいつマジだわ....じゃなくて、なんでこんなことしとんねん!?」
雨の中、問われた少年は首をかしげ、淡々と言葉を語りだす。
「こんな こと?おれ は あのお方 と みんな の ため に がんばってる だけ だよ。」
「みんな、YAKATAカンパニーか!?」
「うん。それ と お客様」
「なんでや、こんな何もでけんくらいの雨を望むヤツがおるか!!」
詰め寄る彼になお、キョトンとした風で話を続けた。
「こえ が きこえた。」
聞いたところによれば、気紛れなヤツはいつも通り何気無くこの近辺を歩いていた際に通りがかりの中高生の会話が耳に入ったらしい。
『アーアチィ...ダルくてやってらんねぇ。』
『梅雨なんだからいっそのこと嵐来て休みになったりすりゃ良いのになぁ。』
『ついでに風強くなってパンツ見えねぇかな。』
「・・・これ を すれば、よろこぶ ひと が いる?」
はーいストップ、少年を遮るようにアラタが叫ぶ。
見るからにその表情は呆れが顕れていた。
「まてまてまておかしーなー?既に意味わからんなコレ。そんなんでよろこぶヤツの方が少ないんやぞ。」
「でも、よろこぶ ひと も いる。」
「嫌がるヤツの方が多いんだよっ。」
良いからさっさとやめろ、不思議そうな少年に言うとしかし、顔をあげ、
「やめる?やめなかったら?」
「わりいが物理で説得さしてもらうわ。」
「おれ は トゥナード。あんた おれ の じゃま するの?」
「ああ、この嵐止めないんやったらな。」
じゃぁ、さぁ .....
ふわりと跳ぶと勢いよくアラタ目掛けて指をはじくと閃光が走り、とっさに横に転がった。
「っぶねぇなお前!?」
「たいくつ してた。おれ と あそんで?」
立っていた場所が穿たれ、煙が昇る様を見詰めるとため息をつき、木刀を手に取る。
「やるしかねっか。」
言うより先にトゥナードは全身に風を纏わせて突進を掛けてきた。
おっと、どうにか避けるもヤツが動きを緩める気配は無く、文字通り縦横無尽に駆け巡る様に思わず面食らう。
これでは手の出しようがないではないか。
.....と、不意に止まると手を空にかざし、アラタに向けて勢いよく振り抜くと勢いを増した雨が打ち付けるように襲いかかった。
「おわっ、つめてぇなコラ!またこのパターンか!?」
「ひゅるるー」
息を吸ってから吹き出すと強風が一気に飛び出してくる。
アラタもトゥナードの攻撃をかわしながら距離を詰めていこうとするがふわふわと飛び回るヤツには一向に近付く兆しが見えない。
「Fall for you!!」
再び手を掲げ、今度は指をはじいたと思えば、次々とアラタ目掛けて雷撃が落ちていく。
跳んで避けるアラタはやがて、落雷に気を取られているトゥナードが静止していることを見抜き、一気に駆け寄る......と
「そらよ!」
「うわ!?」
その身体に木刀を打たれ、倒れこんで怯むと同時に雷がおさまった。
そこ!隙を逃さず狼狽えるトゥナードに飛び乗って押さえると不敵に笑いながら言う。
「オラッどうやコラ!さっさとこの大雨止めんとヒデェぞ?」
しかし威嚇にもなおボーッとしていたヤツはまた勢いよく息を吹く。
「うぉ、寒!!」
その異様な冷たさと強風に思わず顔をそらした隙に少年を押し退けたトゥナードは再び飛んで辺りに季節外れの白い息を吹き散らしながら回転し出す。
呆気にとられるアラタを次に襲ったモノはバラバラとつぶてのように当たる痛み.....ヒョウだ。
「うわ、いったいいてぇ、流石に悪ふざけも大概にせぇよ!?」
「あんた あそんでくれる いったじゃん」
怒号もお構い無しで息を吸い込むトゥナードの口に、今度はヒョウが取り込まれていき、軽く仰け反ってから一気に氷粒混じりの強風が放たれた。
「ギャァア!地味に痛いんよコレェ!!」
「ひゅるるー ブリザード ブレース!!」
口ではふざけたようなリアクションを取りながらも、アラタは内心、先程から防戦一方であることにおののく。
「(コイツ、あんなナリでもやっぱ執行部なんやな.....まずい、こうなりゃ多少無茶しても.....!!)」
力強く木刀を構え、意識を集中させる.....
とその矢先、だんだんと雲が一層黒く染まっていく空模様に気付いたアラタは嫌な予感に汗ばむ。
「おれ たのしく なってきたー!!」
無気力な表情から一転、目を見開いてニッカリと歯を見せながら口角をつり上げると両手を挙げ、静電気がほとばしり......
ヤベェ......!!アラタが悟るより速く、ヤツの呼び寄せた雷が雨を媒介に広がっていき力を増して公園全域に落ちた......
「Foooooooo!! あれ いない ?」
眩い光が辺りを覆った後、高揚するトゥナードは相手の消失に気付く...と、
「おいトゥナード!何してやがんだ。」
探すより先に頭をはたかれ我に帰るヤツは後ろに佇む男ーー青いヘルメットをかぶった同胞を見る。
「あ ロウダー。へん な やつ と あそんでた。」
「あーそうかよ、程ほどにしとけ。今YAKATAビルが軽く崩壊して石油王が来てよく解らんことになってんだ。いつまでもほっつき歩いてんじゃねぇ!」
キョロキョロと消えた相手を探すトゥナードを気にせず、ロウダーは引っ張ってホイールに乗り込む。
そんな様を公園の外ーーちょうど死角になる角から窺っていたアラタは息荒く胸を撫で下ろす。
幸いダメージも少なく身体の自由が利いたため、衝撃で投げ出されたもののとっさに脱することはできた。
トゥナード.....ヤツの気が済んだのか、雨がだんだん弱まってきている。
今のうちに早いところ家へ戻ろう、そう駆け出してからしばらく
「ん、あれは......!」
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