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「ま、前田、岩本!?」
颯爽と二人に肩を貸した彩賀と樹にアラタが声を上げる。
「まったく、那須野のGPSがなければ完全に詰んでいたぞ!」
ありがとう、ぼろぼろなまま領也は二人に歩幅を合わせ、途切れ途切れに言う。
「このまま、地下を、目指してくれ!そこに、行けば......!」
「馬鹿を言うな貴様!」
「そうであるぞ、目先に囚われる暇はない!」
「目先も何も!!それさえ成し遂げれば状況は好転するんだぞ!」
...もっと見るりょーやさん!声を荒らげ、アラタは笑う。
「ボクもりょーやさんもこんな身体な上に今ごろはウォリヤのヤツがあの辺は守ってやがるやろよ。なら、また次が来るまで地道にPAブッ倒して待てばエエ。それに.....」
先程受け取った小箱を見せ、彼は続けた。
「これが『チカラ』なんやろ?やったら間違いなく好転はしたやんけ、な!」
和泉クン......彼の笑顔に微笑み、困ったように首を振ると、
「サンはいらないよ。」
社屋から飛び出し、しろかが待つ三輪に一同が飛び乗る。
「おっせーなぁ。振り落とされるなよー?」
「クッソ!」「この!」
が、発進する彼らを逃すまいとロウダーとアタッカがトルーパーと共に追うが、
「自分に任せろ!」
樹が飛び降りホイッスルを鳴らすと、ミリタリー系の歴史研究会員が銃を構え、隊列を組んで対峙する......
「ハンッ所詮一般人、臆するなぁ!」
そう叫ぶロウダーを皮切りに一同が突進しようとする......が、
[お待ちなさい、ロウダー、アタッカ!もう良いでしょう。一旦建て直しです。]
「ワイズ!?ニッシシ、命拾いしたね?」
全員ロウダーの車輪に乗り込み、撤退する様を見届けると、樹達もその場を去った.....
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「あーもう滅茶苦茶だよぉ。」
ウンザリそうに言いながらアタッカが瓦礫を寄せ集め、
「小童、また我輩との試合に無粋な添え物を.....!!」
「オメェ遅れて来たじゃねぇか!」
憤るウォリヤにロウダーが悪態をつく。
フフフ、そんな中、不意に笑うワイズは
「さすがやってくれましたねぇ、マスタージーニアスーー志藤領也に邪魔者和泉アラタ......!ここまで嘗められようとは、良いでしょう。このままで済ませると思わないで下さいヨォ、ハ、ハ、ハ......!」
狂気を帯びた目でかすれたように笑い、夕陽を見据えるワイズにヒきながらも、アタッカがぼやく。
「つーかさー、アノ演説男はともかく、トゥナードの奴どこふらついてんのさー、全然帰ってこないじゃんかー。」
「アタッカ、あの気紛れに門限とか規則性とか求めるな。って、なんだ?」
何気無く外を見ると、黒塗りのリムジンがビルの前で停まっているではないか。
アタッカとロウダーは慌てて降りていく。
...ターバンを巻いたスーツの男が後部ドアを開き、屈みかけたところで、
「カーペットはいらん。」
その声を聞いて留まる。
そして降り立った人物は......
ターバンを巻き、カンドゥーラと呼ばれる中東の白いローブを纏った、浅黒い髭面の男。
見るからに富豪のオーラを漂わせた人物だ。
「セ、石油王ォオオオ!?」
「だ、誰だアンタ!?」
思いもよらない人物像に困惑する二人に
「誰だも何も、御社に声をかけられたショーンだ。話だけ聴きに来たぞ?」
「オーウ!お待ーチしておりマーシター、HAHA!」
あれ!?後ろから響く声に、更に二人は困惑する。
「プレジデント!?」
「いつ帰って来たのぉお!?」
突然の出来事にたじたじな二人をよそに、プレジデントはショーンと握手を交わし、社内へと戻っていった.....
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「なるほど、しろかが、ねぇ.....」
聖櫻の病院で顛末を聞き、アラタは長い息を吐き出した。
今回のような事態を想定した領也はしろかから予め作ってもらった『精神増強剤』を飲んでいたらしい。
薬が後から効いたことで洗脳が途中ーー厳密にはアラタを空部屋に放り込んだ辺りから解除されたようだ。
「ハハッ、じゃぁ今朝のときはまだ素で操られとったんやね。」
「ま、まぁ情けないがそういうところだねぇ。」
[ったく、無茶しやがって馬鹿野郎。]
ディバイス越しに政子が怒り気味にため息をつき、領也は苦笑する。
「しっかしまぁ、コイツが『チカラ』かぁ.....」
アラタは驚きながら箱を開け、中にある紅黒い"実"をまじまじと見詰めた。
「あまり見てはいけないよ、危険だからね。」
諌める領也に思わず箱にしまい直し、もうひとつの箱と並べる。
「一応しろかに箱を渡しといたけど、まさか外にも『カジツ』を隠し持っていた平社員がいたとはね......」
[けどよシドー、ソイツがホントに超越不審者の正体なのか?]
ええ、領也は頷き、一息ついてから口を開く。
ーーコイツからは確かに超越不審者の放つエネルギーと同じ気配を微弱ながら感じました。
このカジツの気配は、歪んだ欲望を持つ者の心に強く訴えかけ、求めるようになります。
そして、口にした者は身体的な潜在力を増強され、超人的なチカラを得て、欲望に対するこの上ない全能感に見舞われるようになってしまう.....
「りょーやさーん、潜在力とか全能感ってなにさ。解るように言うて~?」
「はぁ、キミに解るように言えば『なんかイケる気がする』ってヤツだ、サンはいらない。」
なるほどなぁ.....うんうんと頷くアラタは興味深げに箱に目を向ける。
[お二人とも、お見事です。ご協力頂きありがとうございました。]
[うむ、和泉君さえ傷が深いのだ、ゆっくり休んでくれたまえ。]
[和泉の諸々はアタシが手立てすっから安心しとけよ、じゃな。]
モニターに軽く手を振り、通話終了してからアラタはさてと向き直る。
言うまでもなく、二人はヒュプノスプログラムの高圧電流にやられ、しばらく入院ということになってしまった。
「で、カジツはどうするん?」
「ん?ああ、ワタシは巧いこと逆用すれば、連中ーーYAKATA執行部めに一泡吹かせられるんじゃないかと踏んでいるよ。」
「でも危険なんやろ?」
大丈夫、立ち上りぎこちなく背筋を伸ばしながら彼は言う。
「ある程度仮説も立ててみたからねぇ。あとは分析と実践さ。というわけで......」
「きゃっ!」
ナースクン!ベッドを整えていた看護士に詰め寄り、
「今の話を聞けば大方事情は解ったろう?さぁ、即刻ワタシに退院許可を!」
「だめですー!ハタヤマ様より絶対に院の判断じゃ無しに退院させるなと承っております!」
言ってる場合じゃないのだ!力説し言い合う二人を見て笑いながらアラタは立ち上がる。
「無理もないでりょーやさん。ただでさえ生身の耐性低いのに電流モロ喰らってしもうたんや。それに引き換え、ボクは鍛えとるしな、やからボクなら」
「二人ともダメです!」
何クソ見てみろとムキになるアラタはその場で包帯だらけの手足を振り回し、体術捌きを連続で披露し、やめろやめろと看護士が口を出す。
後ろで病室のドアが開いたことにも気付かずハイキックの素振を見せるアラタだが、
「どーうだ、これでも退院できないんかぁ??」
「ちょっとこらあ!」
「何してるのよ!」
「ダメ、そんな格好で!!」
「ワアア!!?」
いきなり怒鳴り付ける三つの声に慌ててベッドに潜り込み、アラタはそちらをおやと窺う。
全くもう、声の主ーー雛菜、由紀恵、鞠香を筆頭に、
「オウ、シュンと浮橋も後で来っからよ。」
夏騎に
「随分とやられたんだな、大丈夫か!?」
「うわぁ、痛そう~....」
「め、珍しいね.....」
「何があったのよ.....」
ミカドに陽歌、ハジメりさ、
「ったく、こんだけ動けりゃ心配するもんでもなかったな。」
「まぁまぁ北斗さーん。」
「そうだぞ素直になれ。」
うっせー、北斗に七星、雅一郎とぞろぞろ入ってくるではないか。
「イヤ、来すぎやろ!なんや非公式ファンクラブかぁ?サインはやってへんでぇヴッ」
「うるさい、さっさと寝ろ!」
いってぇ!由紀恵から見舞籠を顔に投げつけられ倒れるがすぐに起き上がって抗議をし、思わず皆が笑う。
その姿を見て領也は口許を緩めた。
「キミは来ないのかい?」
[あー、別にいーよー私は。シドーもさー、今回のことどー思った?]
ワタシか?笑いながら領也は答える。
「そりゃぁ、今回のワタシは許してもらおうとは思わないが、正直彼にこの一連が重荷でないかと思うことは時にはあった。が.....」
ベッドであぐらをかき、由紀恵の手厳しい苦情にハハハと頭を掻きながら皆と笑い合うアラタの姿を軽く見てから再び言葉を返した。
ーーあんな光景がみられるなら彼が超越不審者と戦ってきた意味は確かにあったじゃないか。
さて、速いところカジツに手をつけたいが、だからこそ今は直ぐにでも完治することに専念しよう。
そう考えると彼は賑やかな隣をよそに眠りについた.....
EP22ーー E N D ーー