朝、起きたら顔をあらい、うがいをする。
健康的な生活はここから始まる。
良い天気ね.....目を細める夫人は自宅側の美容室裏口にある郵便受けを開くと、滑り落ちた一枚のチラシに目を向ける.....
--YTK(ユタカ)マート、本日ニューオープン!!ーー
EP21「悪男の舘」
「.........マジか.........マジで......!?」
冷蔵庫の中の虚空を意味もなくまさぐってからアラタは頭を抱えて膝を床に打ち付ける。
...もっと見る「マジだッショーウタイム!!!」
しばらくぼーっとしていたがしかし、現実から目を背けるようにチラチラと冷蔵庫を開け閉めしてはため息をつく.....
「気が付いたら買い置きが無くなってた.....まだまだ大丈夫だと思っていたのに.....何故だ?坊やだからさ。」
遠い目を見据えるアラタは独りでブツブツとこぼしながら着替えるとスーパーのチラシを適当に漁って赤丸を書き込んでいく。
「うーん、まずお茶やな、自販機サイズの箱買い。後は.....」
「和泉クン、買い物かい?」
おっと...!後ろから聞こえた声に少し驚きながら後ろに立つ人物に軽く首を振って彼は応えた。
「ああ、ちょいと食料が無くなってもうてなぁ。」
「なら、ここはどうだね?オープンセール中だよ。」
領也が懐から出したビラに目を通すと、アラタはなんだこりゃと不思議そうに眺める。
「ゆたかまーと?そんなん出来たんか.....」
「ああ、ワタシも偶然、ヒトコトで知ったよ。どうだい?」
「んんん、でも新開店なら混みそうやし.....まぁ見るだけでもええかもなぁ.....ところでさ.....」
ぼそぼそと考え事をしたアラタが不意に声をかけた領也は振り返る?
「なんだね?」
「りょーやさんなんで既に『ジーニアス』なん?」
「.....ああ、油断してたときに生身のとこをやられてね、暫く警戒中なのさ。」
「そういうの早よ言ってくれや。神崎センセ辺りに言えばケガはなんとかなるやろ。」
「ハハハ、そんなに大した傷も無いさ、ホラ早く行くぞー。腹が減ってはなんとやら、キミが勝つにも食事は不可欠なんだ。」
なんーか変やなぁ......一人首を捻りながらアラタは領也に押されるまま歩き出した.....
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YTKマート、名前を聴いたときは訝しんだモノだが、実際に入ってみるとまぁ綺麗な内装で品揃えも良いじゃないか......
「てーか最早モールやなぁ~」
緩く笑いながらアラタは適当に必要なものを籠に放り込んで行くと、ふと自分のモールと言う言葉に反応し、領也に向き直る。
「せや、りょーやさん、薬局行くで?一先ずの絆創膏とか包帯とかは買った方がええねん。」
「良いんだよ、そんなことは気にしなくて。ワタシがこう見えて丈夫なのはキミも知っているだろ?」
「ジーニアス着てからならまだしも、その前に襲われた言うから心配なんやろ。そのままでも目立つしそれにさぁ.....」
なにそれ?ジーニアスのマスクを指すと、アラタはひとつの違和感の正体を小突く。
マスタージーニアスのモノアイ表示の目元には、スコープを思わせるゴーグルのような機具が取り付けられているではないか。
コンコンとマスクの米噛を軽く指で弾いてから領也が口を開く。
「これはだね、センサーさ。超越不審者の放つ気配をより的確に感じ取り、確実に対処するための、ね。敢えて言わなかったが、実を言えばそのテストも兼ねていたのさ....って!和泉クン、後ろだ!!」
な!?不意に声を荒らげる領也にたじろぐアラタはすぐに後ろで聞こえる叫びや奇声を感じ取ると、勢いよく飛び込んで来た何かを一跳びに避けた。
「ウォアアアア!!!!フゥッフーッッ!!!」
間一髪、胸を撫で下ろすアラタに反して影はUターンを掛け、再びブースターを勢いよく噴射させる。
「お前かぁ、お前がアイツラの言ってたジャマモノってぇヤツかァ......」
......リーゼントヘアが突き抜けた、小型のロケットとも宇宙船ともつかない外観から宇宙服の手足が飛び出たような男が、銀河無敵と書かれた旗を構えながら仁王立していたが、すぐに目を張り叫び出す。
「ジャマさせねぇぞぉぉ!!可愛いコと宇宙に行くのは俺だぁあ!!!姉ちゃん月行こうぜぇええ!!」
「なっ!?こんなとこで暴れたらアカン.......よし......!!」
「ガッ!?テメェ邪魔すんなァ!!」
りょーやさん!!!客側に突っ込む宇宙男を後ろから木刀で斬りつけ、睨まれたところでアラタが声を張り、駆け出した。
「ボクがコイツはどうにかすっから、りょーやさんは避難誘導お願い!!」
任せたまえ!その声を聞いたアラタがいよいよ走る速度を上げた時、いきなり足場が崩れ出した。
「な、ちょっ!うわぁあ!?」
「オラよっ!」
「和泉クン!!」
戸惑う隙を逃さなかった宇宙男が推進力に任せたタックルをかけ、穴へと落下する様を見届け呆然とする領也の後ろで、避難していた利用客達は一様に笑い、ヤカタトルーパーへとその姿を変じさせていった......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
......暗い。
驚くほど真暗な部屋の中でアラタは尻をさすって立ち上がる。
幸い、落ちる拍子に目を閉じたお陰か多少視界は良い方だが...と考えていると、不意に眩しい光が灯り、見回すと満点の方のようにチラチラとした光が散りばめられた空間......否、奥に映された光景ーー太陽系の姿を見ると紛れもなく宇宙なのだろう。
「プラネタリウム......?しまった.....!」
先の状況を思い直し我に帰るより早く、激しい風圧が彼の身体を掠めた。
「野郎、まぁだいやがったかぁ......!」
「こっちのセリフだ!俺はさっさとお前をブッ倒して宇宙へゴイッショしてくれる可愛いコを探すぜぇ。」
言うが早いか、ヤツは再び勢いよく突進をかけるなり、避けるアラタに小回りを効かせながら何度も直進してくるではないか。
「ヘッヘヘ、すばしっこいヤロウだなぁ。けどよ、これだけじゃないんだぜぇ?」
!?懐から、先端がパラボラアンテナ風な構造になった、SFでもよく見かけるタイプの光線銃を取り出すなり、一筋の閃光がアラタ目掛けて走る。
ぎゃぁ、思わず叫ぶアラタが怯む隙をついて頭から突っ込む相手をなんとか押さえ込みながらも、思わず後退りを強いられていく。
「コイツ、大人しくしやがれ!」
「へっ、負けてんのはお前だ、さっさと降参しな!!」
「うるせぇ誰が敗けた!」
いよいよ痺れを切らしたアラタに腹を蹴り上げられ、宇宙男が思わず立ち止まって一思いに距離を取ると体に付いたランプの点滅と共にサイレンが響いた。
なんだ!?突然の雑音に思わず辺りを見回すと、耳障りな高い音を伴いながらなにかが飛来して来るではないか。
ふわふわと近づいてきたソレらはアラタ目掛けて派手な色合いの閃光を2,3度打ち出す。
よく見てみればリーゼント頭で目付きの悪いクラゲのような生物(?)が円盤を乗り回して追撃してくるではないか。
「なんーやコノ古くさい宇宙人は!来るなぁ~!」
「ハァッ、ぶっ飛べェ!!」
円盤に翻弄される最中に宇宙男がブースターを吹かせながら回転を付けて飛び込む様を見るなり、アラタはその目の前に円盤を木刀で逸らして衝突させ、
「うお!?ッブネ!」
そのまま速度が落ちたタイミングでブースターを叩き潰すと失速して躓いた奴を一思いに蹴り飛ばした。
「そらよっ!」
「ガァア!!」
ヒクヒクと踞る宇宙男をよそにプラネタリウムが消えた殺風景な部屋呆れたように見回し、そこを出たアラタは驚きの顔を浮かべる。