※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
憮然と世界樹のふもとを眺める影は視線の先、少年が勢いよく跳ぶ様を逃さず、拳銃を向けた.....
「クルァ、タツミヤ!!なんだってンなことすんだよ!」
「貴方も世界樹のことは知ってるだろう?和泉さん。あと麻酔銃だから安心したまえ。」
長身で浅黒い少女、タツミヤは顔色を変えずにアラタを見据えた。
「願いが叶うってか?それがなんの関係がある?」
「一般人の手前、貴方に深くは言わなかったんだがね、こうなれば仕方ないか。まず『世界樹の下で願いを言うと叶う』は本当だ。」
...もっと見る「だろうよ。魔力でも宿ってなきゃ"斬れる"訳がねぇ。ボクもそのお陰で助かったんやしな。」
ただし、アラタの言葉を気に留めず彼女は続けた。
「有効なのは人の精神に干渉する場合、則ち『相手に行動をフる』タイプの願いだ。」
「んー?つまり?」
「まぁ、代表的なのは『告白』。あとは『三回回って犬の真似しろ』とか『代わりに宿題』とかその辺だ。願いを叶えると言うが、世界樹の魔力にやられるから完全な支配でしかないのだよ。」
それがなんだ?しかしアラタは首を捻った。
「雛菜ちゃんには関係ねぇやろ?」
「っ!?だからそういう行動を起こそうという者に麻酔を撃って阻止していたのだ!」
コイツ馬鹿か?言葉なく語れるような表情を一瞬出すタツミヤだが、呆れたようにため息をつきながら話を戻した。
「もしあの子がコク......何か変なことをあそこで貴方に頼んだりしたら、自分でない傀儡となるんだぞ?」
「そんな柄じゃねぇよ、アイツはよ。」
「まだ三ヶ月で何が判るんだい?それに.....」
やれやれと首を振ってタツミヤはアラタの肩を軽く小突いた。
「もし本当につまらない願いを口にしたとして、和泉さんは意思なくそれをこなさねばならず、その反動で彼女は本当の願いを逃すかもしれない。大切な友達、だろう?」
.....なるほどなぁ、苦笑する彼女を見てアラタはようやく納得して頷くが、すぐに真剣な眼差しを向けた。
「それもそっかぁ....って!ならそんときはボクが自力で回避させる!だから射つな!!」
「フン、甘い、甘いぞタツミヤッ!」
ほう、これはこれは.....意外な答えに感心を見せる矢先、声の方向を振り返ると、黒いローブを羽織り、槍を提げた男がカツカツと歩み寄ってくる。
「サモン.....!」
「回りくどい方便で形だけ穏便に済ませるよりも、直球で終わらせるべきだ。和泉アラタ、不要な世界樹の事まで知ってしまったお前は、やはり聖櫻生としてリセットすべきだ。」
「なっ!?リセットやとぉ?」
「ご存知だろ?貴方を快く思わない『過激派』だよ。」
男、サモンに銃を向けながらタツミヤは淡々と語る。
「愚かな。俺はせめてもの情で、聖櫻学園生徒としての記憶を消すつもりはないんだ。失われるのは俺達との関係や.....なんといったかな?"超越不審者"討伐の任を受けていること。」
「な!?御免だわ。それでエエちゅうなら、最初っから選んどるやろ!!」
「高校生として、素敵なガールフレンド(仮)と学友に囲まれた生活は変わらないんだぞ?まぁ、抵抗するなら拒否もしていられなくするさ。来い、アスタロトォオオオ!!」
ひたすら語りながら槍の石突で地に紋様を書き、勢いよく叫ぶと、彼の後ろが黒く澱み、大きなひずみが生ずる。
まずい.....!!攻撃用のライフルに持ち替えるタツミヤをよそにひずみから大きな影が顕現した。
「ゴォオオオオ!!」
四足の竜を思わせる胴から、髭面の偉丈夫の上半身を備え、長鎌を携えた紅い魔性、アスタロト。
肩の翼をはためかせながら旋回する奴にサモンは飛び乗り、高らかに笑う。
「さぁ、痛い目を見ないうちに降参するんだな?」
まったく勝手なことを.....タツミヤが頭をおさえる一方で、アラタは木刀を軽く掌に打ち付けてからバッターのように突き付ける。
「ぜってーヤダ、ヴァーカ!」
ならば!アスタロトが鎌を振り上げてから勢いよく地に叩き込み、咄嗟にタツミヤとアラタがかわす。
最初に反撃に出たのはタツミヤであった。
彼女が両手に銃器を構えるとすかさず両のトリガーを引き、立て続けにアスタロトに向けて発砲する。
弾を避けアスタロトが滑空すると、横凪ぎに払った鎌から真空刃を飛ばしタツミヤを襲うが、本人は避け、アラタが木刀を振るって打ち返した衝撃波に相殺された。
「和泉さん?滞空措置が無いのだから無茶はよすんだ!」
「なーんや今の見たやろ?ボクは飛んでる奴でもなんら問題ねぇ!それに、手段はもうひとつあるからなっ!」
投げつけられたメモに軽く目を通した後、彼女はそれを握りつぶしてポケットに入れ、ニヤリと笑う。
「なるほどな、"ソレ"がなんなのかはわからないが、貴方を信じてつき合ってみようか。」
「ハハハ、タツミヤ!ソイツに手を貸して良いのか?後でどんな対応を受けるか.....」
「それはこっちの言葉だよ、サモン。もう和泉アラタのことは合意で協力者として認定したハズだ!貴方達過激派が変に手を出さないようにするのも私の仕事だし、そっちこそ知られたらどうなる!?」
「フン、後は野となれ!単純に俺達はソイツが気に食わないだけだ!」
互いに言葉をぶつけ合いながらアスタロトはタツミヤを斬りつけんと迫り、対する彼女は距離を取りながら手を止めず連射を繰り出す。
対するアスタロトも鎌を回して弾き飛ばしダメージには至っていないようだ。
そーらよ!足元近くまで跳び上がったアラタが木刀を振り上げる様に気付くと慌ててサモンが槍で迎え撃つがアラタも只では起きぬと落下する前にアスタロトの足を蹴りつけて奴から離れた。
タツミヤァ!!叫ぶアラタの声を皮切りに、タツミヤは両手に拳銃を持つと間髪入れずに散弾を咬まし、突然の猛攻に戸惑うサモン達を我武者羅に撃っていった。
弾切れを起こしてはガトリング、ライフル、果てはバズーカと持ち換え、敵を飲み込む様はもはや弾幕だ。
......ちょいちょい"谷間"から取り出す件については触れないでおこう.....
「くう!このっ!!コイツも魔力の弾か!アスタロトォ、怯まず切り抜けろっ!」
自棄を起こすサモンだが、やがて違和感に気付く。
無理もないだろう、タツミヤに声を掛けた当のアラタは木刀を構えるだけで傍観しているてはないか。
「貴様、抵抗はやめたのか?ちょうど良い!」
無理矢理弾幕から横に逸れ、アラタめがけて襲い掛かろうとするが、彼はそれでも次の行動に移らず、
「なぁに、ちぃと助けを待っとってな。」
こんな状況でか!?いよいよおかしがって大笑いする瞬間、勢いよく身体がぐらつき、アスタロトが叫ぶ。
アスタロトの脇腹にフックで抉るように直撃した存在......ジェットボードに呆気にとられるうちにニッと口角を上げたアラタは2号に飛び乗り、タツミヤもその後ろに着いて正面から突進をかけた。
「小癪なぁ!!」
アラタが振り上げた木刀をアスタロトの鎌が競り合うが、タツミヤが羽根を狙って狙撃の体勢にはいったことを気付くのが遅かったようだ。
痛みにたまらずアスタロトは高度が弱まったところで魔力切れを顕すように時空の歪みに消え、投げ出されて狼狽えるサモンに、
「クッソ......な!?」
「うりゃ、メーンッ!!」
木刀が直撃して倒れこんだ.....
一息ついたアラタと肩を回すタツミヤだが、不意にアラタのケータイが鳴った。
[大変だよあらたん!パレードの恐竜が!!]
何!?アラタの復唱に驚くタツミヤとサモンだが、彼等が学園祭本来の責務を全うせんとする前にアラタは駆け出して行ってしまった。
「スマン、じゃぁなタツミヤ、また会おうぜ。」
「・・・・」
あの男はァア!!サモンは怒りを滾らせるが、追おうとする姿を制し、携帯モニターを見せる。
「なぁ、サモン。彼は力とか正義とか、そんなものはどうでも良いんだ。私には解らんが、報酬も無しにただ困っている人の力になりたい、そういう心があるんじゃないか?」
私達のことも含めてね、仮面とローブを纏い、暴走する恐竜ロボットを転倒させ、停止に追い込むアラタを見てタツミヤが語ると、サモンは頭をかく。
「どれだけ強かろうと結局は一般人、何も『麻帆良』に来て意味の解らない奴等相手に危険を味わう義理なんて無いだろ。」
「あの調子じゃ他校に育っても遅かれ早かれこういうことに首を突っ込んださ。それこそハンターにだってなれただろうね。学園長が認めた男を信じてみないか?」
フン、ため息を漏らすと立ち上がり、サモンは背を向ける。
「俺は降りるぜ?過激派ゴッコもバカらしくなった。」
けどな、小さく微笑むタツミヤに依然として睨み付け、サモンは続けてから去っていった。
「他の奴に啓発するつもりはないぞ?この麻帆良で一般人に特殊事情が受け持たされたのは俺達は蔑ろ、株を奪われたようなモノだからな。納得行かないのは事実だ.....」
フフッ、そういうことと向き合い、どう折り合いを付けるかも彼の問題さ.....やれやれと笑いながらタツミヤもまたその場を後にした.....
EP20ーー E N D ーー
そうか、『過激派』が.....
飴玉をひとつ口に入れ、領也はアラタの話に小さく唸る。
.....弱った。過激派を納得させるには超越不審者を解明し、鎮圧しなくてはならない。
しかし現状はどうだ?
なぜ、どのようにどこから超越不審者が現れるのかは見当がつかない。
連中の力の源は何か.....
見つけるべきものは尽きないが、奴等を倒しても何ら尾を掴めないのが現状だ.....
「さて、どうしたものか.....?」
ーーその願い、叶えて差し上げましょうか?
!?振り返る領也の視線の先、人形の影.....標識に用いられるピクトグラムが立体化したような存在が丸い目を光らせながら佇んでいるではないか。
「おや、なんだね、キミは?」
「いえいえ、私は貴方の願いを満たしたい、それだけの者です。貴方が望むなら、私を手伝って下さい。」
[マスタージーニアス]
きっと答えが......にっこりと目を細める矢先に電子音が響き、瞬く間に領也を包み込んだ。
「ふぅん、もし拒否をしたら?この間襲ってきたボーソー族とジャージ男の知合いなのだろう?」
やれやれ、首を振りながらも影ーーワイズは笑顔を崩さずに歩み寄る。
「確かにそうかもしれませんが、だから何でしょう?なんだって良いじゃないですか。貴方は私と組めば、きっと目的が達成される。」
「ははっ。随分な自信だね。ワタシに言わせればキミみたいなタイプは絶対にろくなことを考えない、なんとなく解るから似た者同士なのかな?」
おどけるジーニアスに、懐から取り出したスコープゴーグル状の機器をちらつかせながら、ワイズは気にせず再び言葉を発する。
「まぁ、良いでしょう。いずれ拒否なんて出来なくなるんですから.....」
いよいよ来るか.....!エネルギーを収束させようと掌を開いて突き出した瞬間、その四肢を一斉に掴まれた。
「!?いつの間に.....!?」
大勢のヤカタトルーパーにギッチリと組み付かれて戸惑うジーニアスに目を歪ませるワイズが近寄って行く。
「キミ達ィ、何を考えている?」
「ノー、クールダウン。私達ワァ、ユーと仲良くなりたいダケデェス。」
!!完全に挟み撃ちだ、背から聞こえる気配に身構えることもできないまま声の主の男はマイクを手に彼の耳元へ近付いた。
ーーWelcome To, YAKATA.....