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「やっぱりジェーンのシュートは最高ね。」
「そんなことない。皆がパスを繋いでくれたお陰だよ。」
所変わってニューヨーク、女子バスケットボールの試合で好成績を修めたチームが互いへの称賛を送り合いながら控室へ戻ってきた。
思いきり動いた後ということもあって各々にハイな状態で、不意に響く拍手に振り返る。
「イヤハヤ。君達実に素晴らしいね?」
「アラ、ナンパの方かしら、ミスター?」
なんのステップも置かず、スーツ姿にターバンを覆った色黒の男がアタッシュを提げながら入ってくる。
「良い試合を見せてもらったからね。是非君達のようなスポーティガールに会って欲しい者が居るんだ。」
...もっと見る「私達に会いたい?」
「世界大会かしら?」
不思議がる彼女達にひとつ思い出しながら男は懐をまさぐった。
「おっと、大事なことを忘れていた。私は石油と始めとする多様な事業を手掛けるドバイの大会社で働く、チャドラスという者でね。君達に会って欲しいのは、会長なのだが.....」
「おい!何をしている!?」
マズイ!!名刺を取り出した矢先、会場警備員に怒鳴られ、慌てて飛び退き後ずさる。
「怪しいな、そういえば聞いたことあるぞ?胡散臭いスカウトマンがどーのこーのと.....」
「チィ!勿体ない逸材だが仕方ない!さらばだ!」
部屋の窓を開け、飛び降りる彼を警備員が追おうとするが、小型ヘリに乗り込むなり、颯爽と消えてしまった.....
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ドバイにそびえる宮殿のような建物『ショーンカンパニー』.....
その会長室の前に立つチャドラスは、軽く扉を叩く.....
入れ、その言葉に促されて一言添えながら重々しいドアを開けると、広々とした空間が広がり、遥か前方の玉座のようなソファに少しだけ近づくと跪いた。
「ニューヨーク女子バスケに出向いていたチャドラスです。会長、誠に申し訳ございません!交渉より先に嗅ぎ付けられました!!」
・・・しばし沈黙だった男.....不精髭が色黒な顔を覆い、ターバンとガウンを着用した会長ーーショーンはひとつため息を吐くと首を振る。
「そうか。最近は他の問題もあって『セルジュ・ジャン・ルメール』をはじめとした国際的な連中の目も厳しいからな。休め。」
「ハッ!ありがとうございます!!失礼致します。」
チャドラスは深々と頭を下げると部屋を後にする。
ショーンは物思いに耽りながらワインを注ぎ、軽くあおった。
油田を当て、開拓の果てに富を得た私だが、満たされない。
理由はひとつ、昔からの夢を未だに叶えられないまま、歳ばかり喰っていくのだ。
叶えるだけの力を得たハズなのに、どうしても理解の足りない奴等の妨害ばかりで遂には警戒警報まで出される始末だ。
「私の中のリトルが、今も尚求める物は、もうできないというのか.....?」
ーーそんなコトあーりマセーンーー
!?不意に声のする方向に向き直ると一人の欧米系男性.....
面会には厳重な手続きを踏ませてあるはずだ。
ソレをこの男は、ノックどころか気配すら感じさせず......?
「い、いつの間に...?」
「アナタの夢、ぜぇひワターシに聞かせて頂けマースカ~?」
両手を広げ、微笑みながら男は歩み寄った....
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志藤はアタシが麻帆良で働いてた時の体育の担当でな、運動が苦手なもんだからたまにマンツーマン指導してやってたんだよ。
葉月庵の座敷スペースでバンバンと領也の背を叩きながら政子は高笑いする。
「マサさんうるさいですよ。迷惑です。」
ハハッ、ジョッキを勢いよく煽ると追加オーダーしだす彼女に呆れながら、唖然と蕎麦を啜る雛菜とアラタにニッと笑いながら彼は言葉を繋いだ。
「和泉クン、今日は折角だ。二人ともサイドも好きに頼みたまえ。新垣クンも遠慮しなくて良い。しろかは少し自重しろ。」
はぁ.....落ち着かない様子で雛菜は領也の隣の少女を見る。
しろかは領也に促される前から次々と当店のデザート枠を注文していく。
「つっても蕎麦屋だからあんまないんだけどねー。」
「おしっ!ほなら遠慮は要らんのぅ!ゆっちゃん唐揚げお願い!!」
ハーイ!元気な後輩の声が響いた後、アラタは政子の話の続きに流を戻す。
「んで、じゃあアレ?りょーやさんと畑山センセが旧知言うのは分かったけど、お互いボクと知り合うことになるってのは知らなかったん?」
「んあーそうだぬぁ。まさかアダシが軽く教えただけのヤロウが、他の奴の修行なんかできるとぁ思わねーよ~。」
「あーもう、マサさんぐっちゃぐちゃじゃないですか。まぁそうだね。ワタシの身体能力はジーニアスで補強してあるからね。まさか聖櫻に転任してるとは知らなかったよ。...サンは要らない.....」
「おむぇ地域新聞読んでぬえな?」
首に腕を回して悪絡みをする彼女を気だるげに牽制する領也に笑いながらアラタは続ける。
「ははっ、なるほどなぁ。まぁ教えられた言うても、基本的には基礎を教えられたら自由にやっとったからなぁ...てか雛菜ちゃんももっと頼めや。」
「いや、悪いし...それにあらたんと違って私はこれで充分なのっ」
「そっか。ゆっちゃん、ビールビール!!」
「ダ メ で す ! !」
悪ノリするもキッパリと切り返され、適当にサラダを頼むアラタと雛菜の様子を見ると、どことなく領也の口元が緩んでいた.....
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
...町の隅、中年後半と思われる目の細い男が、自分の経営する店を閉めると奥の畳に胡座をかき、ミョウガ漬けをかじりながら酒を呑む。
今日も疲れたな...そんなことを思いながらも、自分の求めた理想と現実の相違にひとつため息をもらす。
「毎日毎日こんなことやってるのは良いが...なんつーか女がなかなか来ねぇなぁ....若いコで賑わう店にするのが、そもそもの夢だったのによ....」
テレビをつけ、色々とチャンネルをいじるうちにひとつの特集に目がいくが、すぐつまらなそうに電源を切る。
「しかもなんだ最近はナイトアクアリウムだの。馬鹿かってんだ...!」
どうしたものか、そう考えていると、突然部屋の電灯が点滅したと思えば、電気が落ちて薄暗くなる。
「...停電か?」
元々安物だ、もう限界だったろうと特に気にするでもなく天井を見上げる....と、
『女性受けの良いモノをご用意しては?』
「オナジミの生っちょろいチェーンがやってるようなヤツか?冗談じゃねぇな、あんな邪道はよ。」
不意に聞こえた声に無意識に答えると、ソレは更に続ける。
『若い女性は健康にこだわりますからね。最速の鮮度で提供すれば良いじゃないですか。』
「バカ言え。こちとら提供者の一角として鮮度にはイの一番に気を使ってらぁ...つか、誰だオメェ...てっ、な、なんでぇこりゃあ!?」
やがて違和感に気付き振り返る男だが、それ以上の衝撃を受ける。
確かに自分は部屋に居たはずだ。
しかし、目の前に広がる光景はさながら海か...言うなれば、水槽の様子を水槽の中から見ているような不思議な光景....
呆気に取られながら見ると、前に立つ影ーーぼんやりとした真黒な姿は、辛うじて表情を読める目元をニヤリと歪めて言葉を続ける。
『私の名など、この際いいじゃないですか...ヤカタの力は偉大デス.....』
「ヤカタぁ?」
要領を得ない言葉に思考が止まるがやがて、はっと我に帰るとそこはいつもの部屋で、寿命を迎えたと思った電灯も何事もなかったように点灯していた...
夢か?そう考えながら何気なく手に目を向ける。
「!?な、今度はなんだ...!?」
手に握られた赤黒い、不気味な実のようなもの...
更に気配に振り向くと、赤青緑三色の影が数人、網やタモ、釣竿を携えてたたずんでいた...
「な、なんなんだよ、オメェらはよォ...」
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「ハハッ、どうだったよ。アイツ。」
夕食を終え、領也の部屋で、落ち着いた政子が懲りずに缶ビールを開けながら領也に聞く。
「そうですね。もう少し負い目みたいなモノを感じるかと思いましたが、一切気にしていないようで何よりですよ。」
それに.....悪戯っぽく笑みながら写真を数枚取り出し、政子としろかも適当に取って眺めてみる。
アラタと雛菜が談笑してる写真が殆どだが、どこかアラタからは安心感のようなものが滲み出ているように見られる。
「和泉クンが新垣クンと居るとき、他とは違う、身を預けたような緩さが顕著に見られるようになった。『アノこと』への負い目や近衛学園長達への恩返しから張り詰めてばかりと思っていただけにこれは良いことですよ。」
なるほどなぁ、ニッカリと笑う政子の脇で
「おぇえええ↑、こんなんどうみてもアラタ君のするツラじゃないよね!?気持ち悪いよ!ついでに隠し撮りしまくってるオマエもキモーい!」
「ハッハッハ、口の減らない悪い子だなぁ。」
「さわるなーへんたーい」
領也がひきつりながらしろかの頭をガシガシと掴み、その手を掻かれている脇で
「志藤、もう今日泊めてくれ、おやすみー!」
政子は酔った勢いで倒れ込み数秒で熟睡しだす。
賑やかな一夜が明けると共に新たな月が幕を開く.....
EP17ーーENDーー