「ドゥワァアァァアもぅ!どぉおするんよこれぇええええ!!!」
とある一室、悲痛なのか滑稽なのか見当のつかない叫びを木霊させながら少年は転げ回る。
「しゃーねぇ…かくなる上は……!」
やがて瞳に決意を灯した少年は立ち上がり、自室を後にした……
「ヒホ!?オマエ、何者だホ!?」
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『真一誕生〜松の木の謎〜』
タイトル手抜きじゃねーか(byヴィア)
とある一軒家の座敷で、少年は洋書を読み耽る。
黙々と内容を読み進める脇で、随分ドタドタとけたたましい音が響くではないか。
「・・・〜(まったく、ターサか?それにしちゃ足音軽いような…?)」
「ま ー ぞ っ く く ん !あー↓そ↑びー↓ましょー↑↑!!」
「うわあ!?」
襖をブチ抜く勢いで飛び込んできた影が心当たりしか無い呼称と共に呼び掛け、少年は勢い良く叫びながら思わず立ち上がる。
「あっ、アラタくん!?」
襲いかかった正体ーーアラタに呆気にとられた少年・真一だがアラタはあっけらかんとしながら言葉を返す。
「やほやほ魔族くん、久し振り〜」
「いや、久し振りじゃないんだよ!大体なんで実家(おれんち)知ってんのさ!?」
「いやーなんのこったあらへんで、魔族くんは麻帆良生やし、しなるセンセもオトンさんも協会に関わり持っとる聞いとったから、ここにあるのかなとアタリ付けて探しとってな、その途中で……」
「ヒホヒホ、この家知らないかって聞いてきてビビったけど、シンイチとクニオの名前を出してきたから知り合いだと思ってオイラが案内したんだホー。」
「ジャックフロスト!?てかどうせ聞くなら俺に直接メッセージ送ってよ!それともまたサプライズとか言うつもり?」
アラタの隣に佇む小柄な影ーー青いフードとケープを纏う手足の生えた雪だるまのような魔族ーー祖父の顔馴染みである『ジャックフロスト』の返答に面食らっていると悪びれるでもなくアラタは続ける。
「いやー歩いて来て疲れててそこまで頭回らんかったわ〜」
歩いて!?その返答に思わず真一はまたしても声を上げてしまう。
「東京の聖櫻から埼玉の麻帆良まで歩いて!?イヤマァ君のフィジカルなら無理ではないかな…?」
ブツブツと続ける姿を気にせずアラタはまたしても言葉を繋げる。
「いやーやっぱ冬休みは食べ過ぎてもうてな〜」
「なんか理屈とか色々おかしいけど餅の話?」
「いや、お菓子やな。食いまくったら魔族くんみたいに使い魔的なのでも生み出せるかな思うたからさぁ」
「お腹に口でもできてから出直してきなよ……」
じゃなくて!呆れたままの声をまたしても荒らげながら真一はどうにか口を開く。
「わざわざ何しに来たのさ?」
あーそーそー、アラタもようやく本題を思い出したように手を叩いて返す。
「すまん魔族くん!自由研究終わらへんから魔族くんちの話聞かせてくれへん!?」
自由研究?彼の言い分に真一はまたしても首を捻る。
「冬休みなのに自由研究?聞いたこと無いよ。」
「イヤーほら、アレや。年末に畑山センセと口論になった勢いでそんなんやからモテへんのや〜!言うたらブチギレられてもうてな、特別に自由研究をよこされてしもたんよ〜。ところでジャックフロストくんは魔族くんとどういう関係なんだっけ?」
「ヒホヒホ、オイラはクニオが若い頃から知り合ってのツキアイだホ〜。毎年冬はこうして居候してるんだホー。」
「なるほどなぁ、しなるセンセがれっきとした人間な手前、マスコット枠を擁立しなきゃアカンのやな。イヤでも待てよ、この家既に7人もマスコットみてぇなのおるよな…?」
「ヒホ?シンイチ、コイツ何をブツブツ言ってるでホ?」
「あ〜気にするな、思想がおかしい奴だから……じゃなくてキミまた畑山先生相手にバカやったのか!?」
滞在中にも幾度と見た光景を思い返しながら呆れる真一。
「あのヒトがユーモア欠落患者なんやで。」
「イヤ本当に懲りんな!?」
頼むってぇ〜!言うが早いか呆れる真一に飛びついたアラタがその頭から体からわさわさと撫で回す。
「うゎ気持ち悪っ!!つか頼むってなんだよ、離れろ!」
「なぁ〜魔族くぅ〜ん。出血大サービスやぞコレ〜」
刹那、銃声が一つ響き、蟀谷から銀色の煙を噴き出したアラタがぶっ倒れた。
「気持ち悪りぃつってんだろがァ!」
「ウギャァア何をするドーテー野郎め!」
「ドッ!?当たり前だろ、まだ高校生なんだから!」
「ワハハ甘いな松の木真一ィ、このサイトに移転する前の本家文芸部では『そーゆー話』いっぱいあったで!」
「そういうことを言うな!?」
あれ、でも厳密には公式サークルから派生したからアッチは本家とは言えないのかな?関節技をかけられながらもそっちのけで思案にふけるアラタ。
高校生が戯れれば当然に物音も凄まじいわけで…
「ん〜?真一、お客さんかい?」
足音とともに一人の影が姿を現す。
寝起きなのかややボサつき気味ながら質の良さそうな髪、そして眠たそうな顔。
真一が考え込んだり逆に何も考えていなかったり気まずい時に見せる例のあの顔そっくりなのはつまりそういうことか。
「あぁ、お父さん。ごめんね、騒がしくしたかな。」
気にしないで、ようやく目が覚めたらしい真一の父はしっかりと目を開く。
高校生の父相応の年季や貫禄は感じさせながらも、嘗ては中性寄りだったのだろうと思わせる顔立ちはどこか少年のようにも見えて神秘的な印象を持つ。
・・・尤もくたびれた服装で台無しにされている気もするが。
とにかく彼はアラタの姿を見ると少し驚いたように目を開いた。
「あれ?やぁアラタくん。いらっしゃい。真一の父の真太郎だよ。去年は父さ…父と息子がお世話になったね。」
いやーはっは、あっけらかんとアラタが口を開く。
「どーもどーも真さん。とんでもございませんくてぇ、寧ろ我々聖櫻が真一クンとしなるセンセのお世話になったんすよぉ〜。久し振りに真一くんに会いたくなって来ちゃいました。」
「こーゆー時は調子いいな!?てか、真さん?俺も真一なんだけどー?」
「あ?テメェ様は魔族くんやろが。」
またしても呆れて溜息を吐く真一にアラタがにべもなく返す。
「それはそれとしてっすよ真さん、去年はお会いできなかったけどあの爺様にこのぼっちゃんなら真さんも強いんよな?」
「つ、強い?ってのはよく分からないけど……でも今日はちょうどタイミング良い日だからゆっくりしてってよ。」
そうだった……真一がどこか複雑そうな顔をして頭を抱えて数秒、彼は乗りかかった船だと頭を振りながらアラタに向き直る。
「あーもう。話せそうなことは話すよ、あんま面白くないと思うけどね。」
「ぃやったぅ!」
ただし!両手を振り上げて喜ぶアラタに語気を強めて真一は続ける。
「色々ツッコミたいだろうことは俺が先に説明するから、突っ走ってツッコんだりドツいたりするの禁止ね!」
「おっけーい。」
念を押すように言いながら指を突き付ける真一にアラタもあっけらかんと答える。
「それにしても真さん両目あるんやな、並ならぬワケあって隻眼みたいな偏見あったからイメージとちゃったわ」
「隻眼!?どんなイメージ!?」
「お父さん気にしないで!?コイツ変な奴だから!」
「ヒホホ、コイツめんどくせーホ……」