83: ディジェイヌ
2026-07-19 23:54:22 NzY0ZTU2(69)
「いや〜すごい盛り上がりだねぇ……雛菜ちゃん、川上さんも手伝ってくれてありがとっ!」
救護テント、汗を拭いながら盛況を見届ける鞠香は2人に目を向ける。
「いーのいーの、次の試合までまだ時間あるしねぇ〜」
「はい。それに、水分補給も大事ですから…」
復帰した男子を見送る雛菜に次々とお茶を用意していく瀬莉、本当に助かると笑いながら鞠香も手際よく駆け込んだ生徒達の手当をしていく……
「さっ、さ、佐伯ちゃぁーん!!」
うわぁ!?いきなり激しい勢いで突っ込んできた随分と大きな影に3人驚くも、すぐにその正体を見届けるなり思わず呆気にとられた。
「雛菜ちゃん、騎馬戦なんてあったっけ…?」
...もっと見る「いやぁ…球技大会だし無いんじゃないかな…」
そう口々に言い合う相手は話題の通り3人が1人を担ぎ上げるまさに騎馬戦のような体勢ではないか。
「たた、たっ佐伯チャン!ソラッ曽良が…!」
「いっ一大事ですぞ〜介斗氏が、きゅきゅきゅ急患ッ!!」
「曽良、膝、転んでっ、血、血が……!」
「ちょっと3人とも、擦りむいただけなんだから…ゴメンね、これくらい自分で洗うから気にしないで…」
取り乱して口もおぼつかない3人と対照的に、困ったような口ぶりで介斗が諌める。
その膝にはたしかに血が滲んでいるではないか。
・・・はぁ…呆れたように殊更大きく溜息を漏らした鞠香が立ち上がる。
「ダメだよ適切な処置をしなきゃ。ハイハイちゃっちゃと終わるからとりあえず曽良くんおろして。全く、転んだだけなのにわざわざ3人も付き添わないの、試合中でしょ?」
「ぼ、僕は大丈夫だから…」
「でぇもよぉ〜」
「ていうかさ、6人中4人も抜けちゃったから、ホラ……」
何か言いたげな楓太に雛菜が指摘を入れると振り返る。
「エエかりゅーくん、アイツらの為にも行くでぇ!」
「ハイッ、アラタ殿!常ォォ在戦中ぅ!!」
・・・
「やっべぇ!」
「と、とにかく介斗氏は頼みましたぞ!」
誰ともなく大声を上げ慌てて立ち去っていく姿に3人、やれやれと首をすくめる。
「まったく、去年よりセコムっぷり加速してない?」
「ホント、曽良くん絡むと串間くんまでアレだもんねぇ〜…」
「それにしても、大丈夫でしょうか。」
苦笑いを浮かべる2人の脇で、想い人も参加する試合に瀬莉は目を向けた……
「ワリィ和泉、嶺堂!」
「アラタ、もう良いぞ、パスくれ!」
「おー頼む、ソレっ!てうわ!ボールチャンどこ行っとんねん!?」
「お前ぇ〜どっちに蹴ってんだよ!」
・・・
「ダメ、そうだね……」
\ピピーッ!/
―――――――――――――――――――
「おいヤバいぞ」
ハーフタイム、楓太が頭を掻く。
「さっきから全然運がキテねぇよ……」
「まぁ、ジブンもフータ氏も運動は苦手ですし…ソレもあるのでは…?」
「そこはなるべく配慮して組んでくれてるって言うし、大丈夫だと思うけど…」
息を切らせる大一にしかし介斗は口を挟む。
「たしかに来栖とか立花達みたいなハンターとか、赤跳とか皇とか刻宮とか、運動力高い奴らはバラけて配置されるようになっているんだ、その為にクラス関係なく組んでるらしいしな。それと競技と同じ部活の奴は別の種目出るようにちゃんとバランス配慮はされてるよ。」
補足するような淳の言葉に小さな確信を得た楓太は小さく笑って立ち上がる。
「なら大丈夫だな!オレらには普通に動ける我らが串間も和泉もいるし、それに……」
・・・
「頼んだぜ、嶺堂!」
「承ォオオ知ィ!嶺堂隆、参るッ!」
楓太から受けたボールを受け止めた隆がそのまま勢い良く蹴ったボールを一心に追い掛ける。
「よし、このまま押し切る!常ォオオ在ィ…!!」
ゴールを目前に足を止めず、駆け抜ける隆……と、
「ん?マズイ、嶺堂、横だ!」
「えっ、な、なんと!?」
斜めの方向から突っ込んできた相手選手が勢い良く彼のボールを流れるように掬い取り、そのまま自身のペースで柔軟な軌道を描きながらこちらのゴールへと駆け抜けた。
「相手を避けるのは苦手か、嶺堂……」
「ぷはは、りゅーくんはどこまでもまっすぐやからなぁ〜…」
\ピピーッ!/
―――――――――――――――――――
ま!だ!だ!
勢い良く叫んだ楓太は勢い良く頭を振るう。
「オレらにはまだまだ希望の最輝星、和泉がいる!」
拳を握り、力強く言い放つ姿に、不意に外野から声が掛けられた。
「槌野、アンタ知らないの?」
「んあ?なんだよ織部ぇ〜」
見ればクラスメイトの女子が友人2人を引き連れ呆れたような苦笑を見せる。
「いやほら、英子と一美から聞いたんだけどさぁ…」
「いや〜はっは。どーもどーも。」
あっけらかんと笑ったアラタが設置されたボールの前に立つ。
どうやらキックオフの順番が回ってきたようだ。
ひとつ、大きく息を吸った彼はボールから距離を取ると勢い良く駆け寄り、脚を振り上げる……
「どぉわぁ!?」
なっ!?一同が驚愕する中、アラタの足は豪快に空を切り、置かれたままのボールをヨソに尻餅をついた勢いで転がり、自身がゴールネットに飛び込んでしまったではないか。
「和泉ィーー!?!?」
「彼、球技苦手らしいのよ。」
・・・お、終わった。いつも楽観的な楓太ですら、ソレには確かな確信があった。
『おおっと、アラタ選手、オウンゴール!』
「ちょっ、なんでやボールは入っとらんやろ!」
\ピピーッ!/
―――――――――――――――――――
『以上をもちましてゲームセット、Zチームは初戦敗退となります。お疲れ様でした!』
非情なアナウンスにすごすごと立ち去る6人…楓太は不貞腐れるように頭を掻いた。
「なぁーっ、クソ、こんなん最初はダメダメでもスーパー大逆転の流れだっただろ!」
「いやー、流石に無理だと思うな…」
「そりゃそうだろ、なんで奇跡が起こると思ったんだ、バカ。」
「まぁ予定調和と言いますか…まぁもう動かなくて良いならジブンとしては願ったりですが…」
「いっやー、やっぱ球技は苦手やけど好き勝手走り回れるのは気持ちエエな〜りゅーくん!」
「ハイッ、アラタ殿!!」
『僕たちの聖櫻学園〜球技大会編〜』ーーE N Dーー
[引用][返信][編集][削除]
[👍0][👎0][返信数:0][報告0]