82: ディジェイヌ
2026-07-19 23:52:51 NzY0ZTU2(69)
ガラガラッ!
蕎麦処葉月庵ーー小気味よい音と共に戸が開かれると、活気づく店内に一層大きな声が響く。
「どもっす店長ぉ〜お久ァ!!!」
「おぅ槌野か!相変わらず声がデケェな!」
応じた店主・葉月 哲也は楓太を快く迎えると、後ろに引き連れた3人ともども着席するなりニカッと笑う。
「いや〜最近外食つうとマジワン行ってたからね〜。ってわけでカレーうどんね。」
ねぇよ!!笑い飛ばしながらツッコむとしかしすぐに見知った面々を見ると一つ小さなため息を漏らす。
「哲也おじさん、何?」
「ほ?どうかなされましたか?」
...もっと見る「あ、そういや注文決めてないっすね……」
「イヤ、それにしても槌野と渋木と串間に介斗……オメェら相変わらずだなって思ってよぉ。」
やぁだなぁ〜、彼の言い分にケタケタと笑いながら楓太は引き続き言葉を返す。
「でも逆にさぁ、オレらが久し振りに来た時皆それぞれ全く違う人間引き連れてたら逆に怖くね?」
「別に良いんだけどよぉオメェら。串間はともかくとしてまだカノジョとかいねぇのかぃ?」
ちょっと!?誰よりも早く立ち上がって反論しだしたのは意外にも淳だ。
「待ってくださいよっ、そんな話どっから……!?」
「ん?どうも何も、泉ちゃんたまにウチ来るしよくユズ達と話してんぞ。」
・・・あー、暫し黙した後、気の抜けた声を上げながら淳は納得したように座り直した。
「いやはや、モテる男はツラいですなぁ淳氏ぃ。」
「もぅ、渋木くんたら。でも、島田さんメロメロだもんね。」
「お前らっ……!」
ニヤける大一を咎めながらも口元に手を添えてくすりと微笑む介斗、気まずそうに目を泳がせる淳。
そんな光景を見て楓太は自慢するように顎を上げ、哲也に向き直る。
「んま、オレらはこうやってバカやって笑い合ってる方が大好きなんだよーん。」
「好きにすりゃ良いのは解るけどよぉ、折角聖櫻に入って色気話のひとつもねぇのは勿体無くねぇか?」
「わぁーったよもぉ〜しゃーないなぁ〜哲也くぅん。」
やや複雑そうな哲也に露骨に甘ったれた声を上げながらニタニタと手招きで促した楓太は少し屈んだ彼の耳元に顔を寄せ、小声で囁いた。
「柚子チャンをボクにくだ〜ちゃいっ♥」
・・・
「おー痛ってぇ。雷親父はジョークも加減も知らねえからなぁ〜」
「バカかお前。」
「ジョークにしても相手と内容はしっかり選ぶべきですぞぉまったく。しっかし酒屋並みの怒りようでしたな〜…」
「だね。ひろしおじさんならともかく、哲也おじさんあそこまで怒らせるのは珍しいと思う。多分……」
腫れた頬と頭の瘤を擦りながらグズグズ泣き言を漏らす楓太に、同情の声はひとつも無かった……
◎『僕たちの聖櫻学園〜泡沫の勝負〜』
銭湯・花の湯……壁の向こうで熾烈な闘いが繰り広げられることも知らずに、少女達は癒しの湧泉を堪能する……
桃子「ユズちゃんお疲れ〜」
柚子「はぁ、生き返る…!モモもお疲れ〜」
伊吹「二人共ゆっくりしていってねぇ〜♪」
少女達が華やかに笑い合う中、不意に喧騒の中で存在感を放つ声が響き渡る。
「なぁーなぁー串間、渋木、曽良、和泉。この際だからハッキリさせよぉーぜぇ?こん中でぇ……
誰が一番デッッッカくできるか、よぉ……!」
ッ!?衝撃走った柚子が咄嗟に口元を湯に埋めた。
桃子「あやっ、ユズちゃん?」
伊吹「どうしたの?」
柚子「ブクク!い、いや!なんでもないの、ゴメンゴメン。アハハ……」
柚子「(待って、デッカくって何!?"一番でかいか"じゃなくて"でっかくできる"!?……じゃなくて!あたしも何言ってるの!?)」
アラタ「おっ、アレやっちゃう!?エエなぁ!」
淳「返り討ちにしたらぁ…!」
介斗「えへへ、僕だって負けないよ……!」
大一「で、ルールはどうします?優勝者に貢物とか?」
楓太「アホか、最下位が全員にフルーツ牛乳(※一番高い)に決まってんだろっ!!」
柚子「(え待って皆もやるの!?ていうか、アラタ先輩どころかツッコミ担当な串間先輩も初心な曽良先輩までノリノリ!?)」
アラタ「ぃよっしよし!んじゃまぁとりあえず2分後が勝負やな!」
淳「せーぜー恥かかねぇように鍛えとけよ?」
大一「家でも練習しましたからなぁ。フータ氏…最下位の件、二言は無しですぞ?」
楓太「なんだ渋木ィ、突っ掛かんじゃねえか。あたぼうよ。」
介斗「よしっ、頑張る…!」
柚子「(恥!?家で練習!?鍛える!?2分!?わ、わわ、わかんない!2分後にナニをどうするの!?)」
桃子「それで菫ちゃん先輩がねぇ〜……あや、ユズちゃん?」
伊吹「ねぇねぇ、大丈夫?」
柚子「ひぇっ!?ハッ、ごめんごめん大丈夫!な、なな、なんか部活でいつにも増して疲れちゃったのかなぁ〜!!」
友人達の言葉で我に返った柚子が笑って取り繕い、とにかくなにかの間違いだろうと心を落ち着かせるために談笑の輪に戻ることを決意した。
それにしても2分……この2分の間、息巻く男達は一体何を勤しんでいるのだろう。
先程の掛け合いを境に彼らの響くほどやんちゃな声は途絶えた。
恐らくは例の勝負とやらに懸けているのだろう。
柚子「そう言えばモモ〜、最近あの人とはどう〜?(まだ静か、2分経ってないのかなぁ?)」
桃子「あやや!?」
伊吹「あ、私も気になるかも!」
元々落ち着きの無い性分で活発な柚子にとってそれは初めての感覚だった。
今までこんなにも2分が長く感じたことがあったろうか。
伊吹「あ、いらっしゃーい!」
真由里「おー!お疲れッス!」
桃子「あやや、飛び込んじゃ危ないよ〜」
柚子「お疲れ〜♪(今どれくらい経ったんだろ…?)」
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