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●串間 淳『サッカー部の怨霊』
ーー俺の小学校、昔は高校だったらしくてさ。
七不思議とか怪談的なやつもどっちかつうとその高校として機能してた頃に絡めたような話が多かったんだよ。
近所に高校のOBってオッサンもいて、その人がよく話してたんだ。
んで、夏祭に俺達の学区をそのオッサンが監督してくれるってのもあって、複数人でいたら少し帰り遅くなっても良いって祭楽しんでたんだよ。
21時くらいかな、そろそろ帰ることになってオッサン主導で集団帰宅になったんだけど、近所が小学校だから横を通りかかることになったんだ。
そん時だ。
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なんか騒がしい物音が聞こえてきたんだよ。
流石に9時だし先生の残業ならともかくそういう感じじゃなかった。
そしたらオッサン笑いながら言うんだよ。
「サッカー部の怨霊かもしれねぇ」ってさ。
で、サッカー部の怨霊ってのはなんでも、全国大会候補っつわれてた人が事故ってよ、脚が駄目になっちまったんだと。
それだけを目標にしてたそれですっかり発狂しちまったらしくてその足で病院を出ようとして、階段を駆け下りようとして……っつうことがあったらしい。
その霊が鬱憤を晴らすように夜な夜なグラウンドを片足で走り回ってるって話なんだとよ。
で、それが今いるんじゃねえかってオッサン笑っててよ、俺等もまぁ今にしちゃ不謹慎だけどやっぱ小学生だとそういうの面白がっちまうからこっそり皆で覗きに行ったわけよ。
そしたらさ、い た ん だ よ。
確かにグラウンドを激しく走り回ってたんだ……
「創 設 者 ・ 久 織 篤(クオリ アツシ) の 銅 像 が。」
・・・
「なんっだよソレェ!!!」
暫しの緊張の後、荒く口火を切ったのは楓太だ。
「ハァー期待させやがって、紛らわしいなクソッ!」
「いやはや、折角良い感じに盛り上がっていたのに台無しですなぁ。」
それなー、口々に言う楓太と大一に淳も溜息交じりに頷き、
「一緒に見てた奴も久織かよってガッカリしてたぜ。」
「確かに、二宮金次郎とか初代理事長の像とかが動くのってありふれてるもんね……」
「せやぞ。そんな話やったら麻帆良にもあったわ(※本作独自の設定です)懐かしいなぁ……」
苦笑いを浮かべる介斗とアラタにも同じく苦笑で返すしか無かった。
「でもま、本当はサッカー部の事件なんて無かったんならソレに越したことはねえんじゃねえかな。」
「ハハッ、それもせやな。」
「よし、曽良。無理はしなくて良いぞ。」
「うん、あまり自信はないけど大丈夫。ありがと……」
オドオドとしていた介斗が楓太に促されて一呼吸入れると、ゆっくりと語り始めた……
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●曽良 介斗『背中に……』
ーー僕も小学生の時の話だね。
アレはじっとりとした嫌な暑さの夏だったことを今でも覚えてるよ。
その日、僕は夕飯を終えて両親やうちの猫と団欒していたんだ。
お父さんはテレビを見てて、お母さんと僕は小説を読んでて、猫は自由にうろうろしてて……
そうやって皆で思い思いに過ごしていたんだけどね。
いきなり猫が大きな声で叫んで毛を逆立てたんだ。
みんなビックリしたけど何だと思えばさ。
いたんだ……『G』。
お母さんも僕も一緒になって叫んじゃって、お父さんもそそくさとホイホイと古新聞を取りに行ったんだ。
でも、その間にGはさっさと戸棚の裏側に行っちゃって、僕達は途方に暮れていたんだ。
緊張感の中で様子を警戒していた時、不意に僕の背中にイヤな感触が襲ったんだ。
あの時は標的を逃がした直後だけに、冷静に考える余裕なんて無かった。
『イヤだ!』『取って!』『誰か!』
僕はそんな言葉を不規則に連続的に叫びながらその場で倒れ込んでその場を転げ回るように暴れ回った。
「ちょっと、どうしたのカイちゃん!?」
「バカお前、何やってんだやめろ!」
威嚇のように叫ぶ猫と困惑する両親の諌める声が響いても僕は止まること無く取り乱していたんだ。
あの背中のカサカサとした感触は間違えるはずが無い、なのになんで父さんも母さんもこんなに冷たいんだ……!
「だって、背中にGいるでしょ!?」
「っ?何言ってんだ!?」
「カイちゃん、いないわよ?」
え……???僕の切実な訴えを流すように諭した言葉で僕は我に返って恐る恐る背中に触れたんだ。
いない……
三人、思わず吹き出して笑っちゃったよ。
後で二人に聞いたら放送事故かと思ったとか悪魔憑きみたいだったとか、普段の僕が出さない叫び声だったから本気で心配されたみたい。
でも、なんであの時に限ってあんなに暴れる程に確信を抱くくらいの思い込みをしちゃったんだろう。
今でもわからなくてなんとなく考えてみることがあるんだ……
「まぁ、あの時アミアミのタンクトップ着てたし、それが背中に擦れた感触がGを逃がした緊迫感と相俟ってそうだと思ったんじゃないかなって思うよ。」
どうかな……?一頻り話し終えた介斗が四人を見る……と、
「曽良、怖かったな……」
「介斗氏、そんな辛いことがあったのですか〜!?」
「曽良!またGが出たら呼んでくれよ、やっつけてやるからな!!」
うわわ!?困惑する介斗をよそに淳と大一と楓太が彼にまとわりついてくしゃくしゃと撫で回しながら泣き交じりの優しい笑顔を見せる。
「ちょ、ちょっと3人とも、僕だってもう高校生なんだから……」
そこまで言いかけた時、視界の隅を小さな影が素早く横切った。
「うわぁ!?」
叫ぶ介斗、他3人も続いてその目線を追う。
暗がりの中で恐る恐る目を凝らすと、そこにあるのは黒い服ボタンだ……
「あ悪りい悪りぃ。ボタン取れてしもうたわ……って?」
頭を掻きながら詫びるアラタと対象的に、介斗以外がゆらりと立ち上がる。
「アラタァ、テメェ覚悟できてんだろうな……?」
「いーずーみーくぅん?」
「流石に今のはちょっと、ですなぁ。」
「え…?ボクヤバい感じ?ってちょっ待っうわぁあ!?」
キョトンとする彼がアクションを取るより先に3人がボコボコと飛び掛かり絶叫が響いた。
「やっちゃいかんことがありますぞアラタ氏〜」
「反省しろ和泉ィ!」
「イヤ、ほんまゴメンな介斗くん……」
「気にしないで。もう3人とも、和泉くんだって悪気があったわけじゃないんだから……」
「甘いぜ曽良、コイツはわざとやっててもおかしくない、そういう男だ。」
ボロボロになって謝るアラタに逆に申し訳無さそうに答える介斗が親友3人に咎めるように続けるが、淳は気まずそうながらもやや苦々しく答えた。
「気にすんな介斗くん、これはボクの間が悪すぎる不注意やったんやし〜」
「しっかりしてくれよ、和泉。次はお前だぞ。」
「そういやそうか。ほな、やったるか。」
あっけらかんと笑うアラタに楓太が促し彼も不敵に笑って応じた……