2: ディジェイヌ
2026-07-16 23:38:21 NmE0YTIy(5)
「『グリモワース・バランギスーー汝、在るべき門扉へと還り給え、"グシオン"』っ!!」
あ゛……?真一の言葉に不思議そうに見返す異形だが、すぐに奴を拘束するかのような光が絡み付いて行く。
「あ゛あ゛っ!?あ゛、あ゛あ゛あ゛ぁ゛……!!!」
もがくも虚しくその身体は地へと沈むかのように埋もれていき、眩い光が晴れると、紋陣と共に異形ーーグシオンは姿を消し去っていた……
・・・ふぅと一息つく真一、周りで歓声を上げる妙な生物達……
「フッハハハ、大義であったぞキサマらァ!!」
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と、不意に笑い声が響き、目を向けると悠然とした振る舞いで何やら影が宙より降り立つではないか。
その人物は腕を組み、大股に仁王立ちしながら今一度小さく笑う。
黒い全身に尖った爪先と尻尾、頭頂の角に強気な表情と、大まかな印象は典型的な悪魔そのものだが、頭上には黄金色の天輪が灯り、背からは刃のように鋭い白銀の翼を備えた、なんともチグハグな容姿の存在だ。
あと恐ろしく背が小さい、恐らく優輝の腰元くらいまでしか無かろうか。
「まだまだ無駄こそ多いが、以前よりは遥かにスムーズな対応ができるようになったと言えるなぁ、この我が褒めて遣わそうぞ!」
「黙れフェシル!テメェに言われることじゃねぇ!」
「そーよ、アンタ何もしてないじゃない!」
不服そうに声を荒らげたターサとヴィアにしかし、あしらうようにフェシルと呼ばれた彼は答える。
「そもそもこの我が出るような幕でもなかったろう、傍目に見ても十分キサマらで事足りるのが解っていたからこそ、松の木真一も判断したのだろぅ。」
「そーゆーハナシじゃねーわよ!」
「エラそーに言うなってんだゴルァ!!」
突如言い争う3人に呆気に取られているが、
「危ないところじゃったのぉ小娘。」
「わわっ、まだいる!?」
嗄れ声が後ろから響き、慌てて飛び退く。
…鳥だろうか?巨大な真鍮製の鍵を杖代わりに支える身体は黄色い羽毛に包まれ、頭には王冠、手とも翼ともつかぬ部位の指先?羽先?には指輪を幾つも嵌めた、随分と豪奢な装いだ。
奴はカラスのように大きな黒い嘴と顔に二対並ぶ四ツ目をニタリと緩めながらトボトボと歩み寄ってきた。
「ワシはこやつら6人やマツノキの謂わば保護者のような者、ソレに助けられたお主はワシに礼を果たさねばならんなぁ?」
「え、あっ、お礼、ですか?何をしたら……」
「うむうむ、そうさなぁ……とりあえずは「こらぁ!」痛いっ!」
顎をさすり、何やら提案をしようとした矢先に真一が怒鳴り、鳥の頭を分厚い書物で叩いた。
「何をしよるのじゃマツノキ!ワシは何らおかしなことは…!」
「それやめろつってるだろモマ!」
それよりも…カーカーと不満げに騒ぎ立てる鳥モドキーーモマを適当に流した彼は眼の前の女子に向き直る。
「えっと……花房さん大丈夫?怪我は無いかい?」
「まっ、マツノキさん…!」
優しい呼び掛けにハッと優輝は思い出す。
そうだ、眼の前で繰り広げられた出来事のインパクトで忘れていた。
この人達が来なかったら、私今頃……
ぐすっ……項垂れた彼女は口元を震わせた。
視界が段々とぼやけていく。
「あり、ありがとうございます、マツノキさん、皆さん……」
花房さん…真一は言葉を詰まらせる。
彼女の言いたいことは痛い程に伝わってくるし、どれほどの気持ちだったかも目に見えるようだ。
なんと言えば良いんだろう。
「ゴメン、もっと早くアイツを探し出せれば良かったんだけど……」
「い、イエ!決してそんな、貴方のせいではありませんっ!」
「っ…!」
真一の言葉に慌てて顔を上げる優輝、その儚げな表情に思わず彼はたじろぐ……
「ちょっとっ!」
「いて、ナニすんだよビィ!」
不意に手の甲に走る痛みーー見ればヴィアが尾のトゲを一刺ししてきたらしい。
「ったく、なぁーにデレデレしちゃって…!」
え!?思いがけない言い分に思わず一瞬言葉が出ない。
間違ってもそんなつもりは無かったハズだ。
「あれれぇ、ビィちゃんモヤモヤしてるぅ?」
「な!?うっせーわよデモス、そんなんじゃないっ!」
しかし、ニコニコと微笑みながら抱き着くデモスに今度は慌てた様子でヴィアが口答えをする。
そんな様子を横目にしかし、優輝はハンカチで涙を拭うと、今一度真一を見る。
先程迫った恐怖に颯爽と駆けつけた真一の振る舞い、そしてゆるキャラだかマスコットだかわからない七人?の生物……
「あの、マツノキさん!」
「んっ?」
えと、その……
「貴方は、それに、この子達は一体……?」
優輝は改めて疑問に口を開いた。
ーー松の木 真一は麻帆良学園からやってきた短期転入生である。
しかしその実態は秘匿されている魔法関係者にして銀弾の射手、そして今はまだまだ未熟ながら召魔士(サモナー)の道を歩んでいる。
ある種お守り教育のような経緯で魔界低層に住まう下級の魔性たちと契った彼は聖櫻を中心に発生しているとある事件を受け、両校の計らいから ある男子と協力して解決に当たる特命を負ってやってきたのだ……!
『Ⅰ・転入生』E N D
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ーーアラタ……和泉アラタ、和泉アラタよ…!ーー
「ん、んあ……なんや…?ここ。」
頭に響く厳かな声に目を覚まし、気だるげに首を鳴らしながら上体を起こすと辺りを見回す。
随分紅々とした光に包まれて物々しい雰囲気の場所だ。
「儂だ、和泉アラタ……!」
ん?頭上から響いた声に顔を向けると、ぼんやりと巨大な影が見下ろす姿を見つけた。
「あれ、なんやアンタ……?」
段々とはっきりしてくるその姿にアラタは大きく見覚えがあった。
なんならその予想が正しければかなり最悪の事態であることも……
「和泉アラタよ、儂だ、『閻魔』だ……!」
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「えぇ……」
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